中小企業の社長と経理担当者が、法人税申告書、納税予定表、資金繰り表を見ながら防衛特別法人税の影響を確認しているビジネス向けイラスト

防衛特別法人税とは?中小企業にも関係する?税額ゼロでも申告が必要な理由と納税資金の注意点

吉本亘

吉本亘

「防衛特別法人税」という言葉を聞いて、
「中小企業にも関係するのか」
「法人税とは別に税金が増えるのか」
「自社でも申告が必要になるのか」
と気になった方もいるのではないでしょうか。

防衛特別法人税は、令和7年3月31日に公布された法律により創設された新しい税金です。令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人は、防衛特別法人税の納税義務者となり、確定申告書の提出が必要になります。

中小企業の場合、実際に税額が出ないケースもあります。
ただし、ここで注意したいのは、防衛特別法人税額が0円であっても申告が必要とされている点です。

この記事では、防衛特別法人税の概要、中小企業への影響、税額ゼロでも申告が必要な理由、納税資金を確認するときの注意点を整理します。

防衛特別法人税とは?

 防衛特別法人税とは、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人を対象に、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から申告・納付が必要となる新しい税金です。 

法人税や地方法人税の申告とあわせて確認する必要があるため、法人の決算・申告実務に関係する制度です。

防衛特別法人税の計算は、簡単にいうと、一定の税額控除を適用しないで計算した法人税額から年500万円を控除し、その残額に4%をかけて計算します。国税庁の資料でも、基準法人税額から年500万円を控除した金額に4%の税率を乗じて計算すると説明されています。

整理すると、次のようになります。

項目 内容
対象開始時期 令和8年4月1日以後に開始する事業年度
対象法人 各事業年度の所得に対する法人税を課される法人
計算の考え方 基準法人税額から年500万円を控除し、残額に4%
申告 防衛特別法人税確定申告書の提出が必要
注意点 税額が0円でも申告が必要

このように、防衛特別法人税は「利益が出た会社に一律で追加税額が出る」という単純なものではありません。

中小企業では、まず自社の法人税額をもとに、税額が出る可能性があるかを確認することが大切です。

中小企業にも関係する?税額が出る会社・出ない会社の考え方

中小企業にとって気になるのは、
「自社にも防衛特別法人税がかかるのか」
という点だと思います。

結論としては、中小企業にも申告実務としては関係します。
ただし、実際に納付税額が発生するかどうかは、基準法人税額によって変わります。

防衛特別法人税は、基準法人税額から年500万円を控除した残額に4%をかけて計算します。

 通常の中小企業であれば、基準法人税額から年500万円を控除する仕組みがあるため、防衛特別法人税額が0円になるケースもあります。ただし、留保金課税や通算法人などが関係する場合は計算が複雑になるため、個別に確認が必要です。 

ここで注意したいのは、判定の基準が「利益500万円」ではなく、基準法人税額500万円であることです。

「利益が500万円を超えたら必ずかかる」という意味ではありません。
法人税額をもとに計算するため、実際に税額が出るかどうかは、所得金額、法人税額、税額控除などの状況によって変わります。

中小企業の場合、税額が出ないケースも考えられますが、利益が大きくなっている会社や、法人税額が一定以上になる会社では、早めに影響を確認しておきたいところです。

税額ゼロでも申告が必要な点に注意

防衛特別法人税で特に注意したいのは、税額が0円でも申告が必要とされている点です。

e-Taxの案内では、防衛特別法人税額が0円であっても申告が必要とされています。また、中間申告書は令和9年4月1日以後に開始する事業年度から提出する必要があると案内されています。

国税庁の資料でも、基準法人税額が0となる場合や、基礎控除額で課税標準法人税額が0となる場合でも、防衛特別法人税確定申告書を提出する必要があると説明されています。

つまり、
「うちは中小企業だから関係ない」
「税額が出ないなら何もしなくてよい」
とは言い切れません。

法人税申告の際には、防衛特別法人税の申告書も確認する必要があります。

また、防衛特別法人税の申告書は、法人税及び地方法人税の申告書と一体の様式とされています。ただし、別表一や別表一の二では、防衛特別法人税の記載欄は法人税・地方法人税の記載欄とは別葉になるため、提出漏れに注意が必要とされています。

実務上は、顧問税理士や会計事務所と、申告書の変更点や提出書類を確認しておくと安心です。

防衛特別法人税は納税資金にどう影響する?

防衛特別法人税は、税額が出る会社にとっては、法人税・地方法人税に加えて納付額が増える可能性があります。

たとえば3月決算法人の場合、令和8年4月1日から始まる事業年度が対象となり、通常は令和9年5月頃の申告・納付で確認することになります。防衛特別法人税の確定申告書は、原則として各課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出する必要があります。

中小企業にとって大切なのは、制度の名前を知ることだけではありません。

実際に確認したいのは、
来期以降の納税資金にどれくらい影響するか
です。

特に、次のような会社は早めに確認しておくと安心です。

  • 利益が増えている
  • 法人税額が大きくなっている
  • 決算後に納税資金を慌てて準備している
  • 消費税の納付も重なりやすい
  • 借入返済や社会保険料の負担が大きい
  • 月次で法人税の見込みを確認できていない

防衛特別法人税そのものの税額が大きくなくても、法人税、地方法人税、消費税、社会保険料、借入返済などが重なると、決算後の資金繰りに影響することがあります。

納税資金は、決算が終わってから急に準備するものではありません。

毎月の試算表をもとに、利益の見込み、法人税の見込み、消費税の納付見込み、社会保険料や借入返済まで含めて確認しておくことが大切です。

自社で整理しやすいケース・専門家に確認した方が安心なケース

防衛特別法人税は新しい制度のため、まずは自社にどの程度関係するかを整理することが大切です。

自社で整理しやすいケース

次のような場合は、まず社内や顧問税理士との通常のやり取りの中で確認しやすいでしょう。

  • 自社の事業年度が分かっている
  • 令和8年4月1日以後に開始する事業年度を確認できる
  • 毎月の試算表が早めに出ている
  • 法人税の見込み額を確認できている
  • 納税予定を資金繰り表に反映している
  • 顧問税理士から制度改正の説明を受けている

このような状態であれば、税額が出るかどうか、申告書類で何が変わるか、納税資金にどの程度影響するかを確認しやすくなります。

一度専門家に確認した方が安心なケース

一方で、次のような場合は、一度専門家に確認した方が安心です。

  • 防衛特別法人税が自社に関係するか分からない
  • 基準法人税額の考え方が分からない
  • 税額が0円でも申告が必要という点を把握していなかった
  • 利益が増えており、来期以降の納税額が不安
  • 法人税・消費税・社会保険料を含めた資金繰りが見えていない
  • 月次試算表の確認が遅れている
  • 決算後に初めて納税額を知る状態になっている

新しい制度は、税額の有無だけでなく、申告書類や決算スケジュールにも影響します。

早めに確認しておくことで、申告時期になってから慌てることを減らしやすくなります。

中小企業が今から確認しておきたいこと

防衛特別法人税について、中小企業が今から確認しておきたいことは次のとおりです。

  • 自社の事業年度はいつからいつまでか
  • 令和8年4月1日以後に開始する事業年度にいつ該当するか
  • 基準法人税額が年500万円を超える可能性があるか
  • 税額が0円でも申告が必要なことを把握しているか
  • 法人税申告書類の変更点を確認しているか
  • 来期以降の納税資金を月次で見込めているか
  • 消費税や社会保険料も含めた支払い予定を確認しているか
  • 顧問税理士にどこまで確認するか決めているか

防衛特別法人税は、単に「新しい税金が増えた」という話だけではありません。

中小企業にとっては、
法人税申告で確認すべき項目が増えること
税額が0円でも申告が必要になること
来期以降の納税資金を早めに見込む必要があること
が重要です。

そのため、制度の概要を知るだけでなく、自社の月次管理や資金繰りにどう反映するかまで確認しておきましょう。

よくある質問

Q. 防衛特別法人税は中小企業にも関係ありますか?

はい。各事業年度の所得に対する法人税を課される法人は、防衛特別法人税の納税義務者となります。ただし、基準法人税額から年500万円を控除する仕組みがあるため、税額が出ない中小企業もあります。税額が0円でも申告が必要な点に注意が必要です。

Q. 防衛特別法人税はいつから始まりますか?

令和8年4月1日以後に開始する事業年度から対象になります。たとえば3月決算法人であれば、令和8年4月1日から始まる事業年度が対象となり、通常は令和9年5月頃の申告・納付で確認することになります。

Q. 防衛特別法人税の税率は何%ですか?

防衛特別法人税は、基準法人税額から年500万円を控除した残額に4%をかけて計算します。税額が出るかどうかは、法人税額などの状況によって変わります。

Q. 税額が0円でも申告は必要ですか?

はい。e-Taxの案内では、防衛特別法人税額が0円であっても申告が必要とされています。国税庁の資料でも、基準法人税額が0となる場合や、基礎控除額により課税標準法人税額が0となる場合でも、防衛特別法人税確定申告書の提出が必要とされています。

まとめ|防衛特別法人税は、税額だけでなく申告と納税資金まで確認しましょう

防衛特別法人税は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から始まる新しい税金です。

中小企業では、基準法人税額から年500万円を控除する仕組みにより、実際の税額が出ないケースもあります。
しかし、防衛特別法人税額が0円であっても申告が必要とされているため、「税額が出ないなら関係ない」と考えない方がよいでしょう。

特に確認したいのは、次の3つです。

  • 自社の事業年度でいつから対象になるか
  • 防衛特別法人税額が出る可能性があるか
  • 税額が0円でも申告書の提出が必要であることを把握しているか

また、税額が発生する会社では、法人税・地方法人税・消費税などとあわせて、決算後の納税資金を確認する必要があります。

防衛特別法人税は、制度の名前だけを見ると難しく感じるかもしれません。
しかし、中小企業にとって大切なのは、制度の細かい背景よりも、自社の申告・納税資金・月次管理にどう関係するかを整理することです。

ビジョン・ナビでは、法人税申告だけでなく、制度改正への対応、納税額の見込み確認、月次管理、資金繰りの整理まで含めてご相談いただけます。

「防衛特別法人税が自社に関係するのか確認したい」
「税額が出るかどうか、早めに把握しておきたい」
「法人税や消費税を含めた納税資金を月次で確認したい」
「決算後に慌てないよう、経理体制を整えたい」

このようなお悩みがある場合は、一度ご相談ください。

新しい税制に早めに対応できるよう、自社の数字と納税予定を整理しておくことで、今後の資金繰りや経営判断もしやすくなります。

吉本亘
執筆者:吉本亘
吉本亘(よしもととおる)税理士法人ビジョン・ナビ所属。入社以来、税理士補助として中小企業・個人事業主の月次処理や決算・申告関連のサポート業務に携わる。数字を「経営判断に使える形」に整えることを意識し、実務の現場で起こりやすい勘違いやつまずきポイントを、わかりやすく整理して伝えることを重視している。現在は業務と並行して、事務所ブログの企画・改善にも取り組んでいる。