「富裕層課税はこれから強化されるの?」「相続対策は、今まで通りで大丈夫?」――資産規模が大きい方ほど、制度変更の影響が“じわっと効く”ため不安になりがちです。
2026年(令和8年度)税制改正は、物価高対応など幅広い改正がありつつ、負担の公平性という観点から“高所得・資産家層に関係する論点”も含まれています。
2026年税制改正で見える「富裕層課税」強化の方向性
超高所得者向けの“ミニマム税”が引き締め:対象範囲と税率が見直し
令和8年度税制改正大綱では、いわゆる超高所得者向けの負担調整(「特定の基準所得金額の課税の特例」)について、対象となる基準所得金額の水準を引き下げ、あわせて税率を引き上げる見直しが示されています(令和9年分以後の所得税から適用)。株式譲渡など分離課税の所得が大きいケースでも影響を受け得るため、資産家ほど「自分は対象になる可能性があるか」を先に確認しておくと安心です。
“税率”だけでなく、情報把握と調査の精度が上がる流れにも注意
富裕層課税は、法律の税率引上げだけで決まるものではありません。国税当局は、国外財産調書などの情報や海外との情報交換を活用しつつ、富裕層・海外投資のある個人への調査を行い、追徴税額などの実績も公表されています。こうした流れの中では、「把握されにくい前提で組んだ設計」は通りにくくなります。制度変更がなくても、説明できる証拠(契約・評価・送金根拠)を残す運用が、実務面でのリスクを下げます。
相続・贈与で押さえたい2026年の変更点
教育資金の一括贈与の非課税は“延長なしで終了”:使うなら期限と運用が重要
大綱では、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について、令和8年3月31日までの信託等可能期間を延長せず終了する方針が示されています。期限までに拠出した分は引き続き適用可能とされているため、「駆け込みで拠出すべきか」よりも、そもそも利用実態(実際に教育費へ充当できる見込み)と管理の手間を踏まえて判断するのが安全です。
事業承継(納税猶予)の“計画提出期限”は延長:会社オーナーは段取り勝負
資産家の相続は、家族の相続と事業承継が同時に進みます。大綱では、個人事業用資産に係る納税猶予の承継計画提出期限の延長、非上場株式等の特例納税猶予(特例承継計画)の提出期限延長など、期限面の手当てが示されています。制度そのものの是非は別として、期限管理は“後から取り返しにくい”ため、該当しそうなら早めに要件とスケジュールだけ整理しておくと判断がラクになります。
資産家の相続対策は「税率予想」より先にやることがある
まずは“相続診断”で見える化:争い・納税資金・事業の安定を同時に点検
富裕層ほど、財産が不動産・自社株・持分など「分けにくい資産」に偏りやすいです。対策の第一歩は、節税スキームよりも、①財産と負債の棚卸し ②名義と実質(原資)の確認 ③後継者・株主構成の整理 ④納税資金の見通し、の“診断”です。ここが整理できると、遺言・生前贈与・資産組替えなどの優先順位がはっきりします。
2026改正の影響が出やすい人は「所得の構成」と「大きなイベント」を点検
超高所得者向けの負担調整は、給与だけでなく投資所得なども含めた“所得の全体像”で影響が変わり得ます。M&Aや大きな譲渡、配当の増加など「一発で所得が跳ねる年」が見えているなら、対象になり得るか・いつ何が発生するかを整理しておくのが実務的です。加えて、家族への資金移動(贈与)や契約関係は、後で説明が要る場面が増えるため、証憑と記録の整備が効きます。
ポイント整理(チェックリスト)
| まず確認したいこと | 目安 |
|---|---|
| 所得の構成(給与・配当・譲渡など) | “大きな年”があるか、超高所得者向け措置の対象になり得るか |
| 贈与の利用状況 | 教育資金一括贈与の扱い・期限・実態 |
| 事業承継の段取り | 納税猶予の計画提出期限など、期限の管理 |
| 証憑・記録 | 資金移動や評価の根拠を説明できるか |
よくある質問Q&A
Q1. 「富裕層課税が強化」と聞くと、今すぐ何かしないと損ですか?
焦って動くより、まず「自分が影響を受ける可能性がある論点(所得・贈与・承継)」を切り分けるのがおすすめです。影響は“税率”だけでなく、所得の構成やイベントの有無で変わります。
Q2. 教育資金の一括贈与は、駆け込みでやった方がいい?
期限だけで決めると、使い切れない・管理が重いなどで逆に困ることがあります。制度の終了方針と「期限までの拠出分は適用可」という扱いを踏まえ、実際の教育費見込みと運用の手間から判断するのが安全です。
Q3. 相続対策の費用感はどのくらい?
棚卸し(相続診断)だけなら比較的軽く始められますが、事業承継や納税猶予、遺言作成、資産組替えまで踏み込むと論点が増えます。まずは「何を決めたいか(分け方/納税資金/承継)」を整理してから範囲を決めると、無駄が出にくいです。
まとめ
2026年税制改正では、超高所得者向けの負担調整の見直しなど、公平性を意識した流れが見えます。 一方、相続対策は“税率予想”より先に、財産の見える化・納税資金・事業承継の段取りを整えることが成果に直結します。迷う場合は、まず診断(棚卸しと論点整理)だけ専門家に確認する選択肢もあります。
