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不動産オーナーがやってしまう相続対策の失敗例3選

税理士 林遼平

税理士 林遼平

「節税したつもりが、家族が揉める結果に…」

こんにちは、税理士法人ビジョン・ナビです!

不動産を多く所有するオーナーの方にとって、「相続税対策」は大きな関心事です。
しかし実際の現場では、節税を意識しすぎて逆にトラブルを招くケースが後を絶ちません。

たとえば、

「生前贈与を急ぎすぎて税務署に否認された」
「共有名義にしたせいで売却や修繕が進まない」
「借入でアパートを建てたが、相続税よりローン返済が重荷に…」

これらは、すべて「数字と将来設計のバランスを欠いた対策」の結果です。

この記事では、京都で多くの不動産オーナーを支援してきた税理士法人ビジョン・ナビが、実際によくある失敗例とその回避策を、わかりやすく解説します。

失敗例① 節税を優先しすぎて「現金不足」に陥る

アパート建築による節税の落とし穴

「相続税を減らすために不動産を建てる」──よくある対策のひとつです。
建物を建てると土地の評価が下がり、相続税評価額が圧縮されます。
しかし、現金が減りすぎて“納税資金が足りない”という問題が発生することがあります。

たとえば、相続発生後に税金を現金で払えず、

  • 不動産を慌てて売却

  • 借入金返済で赤字経営

  • 家族間での意見対立

といったトラブルにつながるケースが少なくありません。

防止策:納税資金シミュレーションを行う

節税対策を行う前に、必ず「納税資金の試算」を行いましょう。
税理士とともに次のような点を確認するのが効果的です。

確認項目 チェック内容
納税額の目安 相続税試算書の作成
現金・預金の残高 納税に充てられるか
借入金返済の見通し 承継後の返済負担を把握
不動産の収益性 維持管理コストも考慮

「節税」だけでなく「支払い能力」を見据えた対策が重要です。

失敗例② 共有名義にして“相続後に動けなくなる”

ありがちな「兄弟で平等に分ける」落とし穴

相続トラブルで特に多いのが、不動産を共有名義にするケースです。
「平等に分けたい」という気持ちは理解できますが、
実際にはこの“共有”が将来の争いの火種となることが多いのです。

なぜなら、共有名義では次のような問題が起こるからです:

  • 売却・修繕・賃貸契約に全員の同意が必要

  • 1人でも反対すると不動産が“凍結”状態に

  • 持分割合により収益分配や税務処理が複雑化

その結果、「相続対策をしたつもりが、資産が動かせない」という状況に陥ります。

防止策:法人化・遺言・持株会社の活用

不動産の共有を避けるためには、以下のような手法が有効です。

対策方法 メリット
法人化(不動産管理会社設立) 資産の一元管理と節税効果
遺言書・遺産分割協議書 意思を明確に残す
持株会社方式 次世代へのスムーズな承継

税理士・司法書士・弁護士が連携して設計することで、
家族の意見を尊重しつつ、資産を動かしやすくすることが可能です。

失敗例③ 生前贈与を「思いつき」で実行してしまう

暦年贈与の“非課税”を誤解しているケース

毎年110万円まで贈与税がかからない「暦年贈与」は人気の制度ですが、
税務署は“形式だけの贈与”を厳しくチェックしています。

たとえば次のような場合、贈与が認められないことがあります。

  • 名義だけ子どもにして実際は親が管理している

  • 毎年同じ金額を定期的に振り込んでいる

  • 贈与契約書を作成していない

このような場合、「相続税の対象」として再計算され、
結果的に多額の追徴課税を受けることもあります。

防止策:計画的な贈与と記録の保管

贈与を行う際は、以下の点を押さえておきましょう。

ポイント 内容
贈与契約書 毎年作成し署名押印する
資金移動 受贈者本人の口座へ振込する
贈与額 生活費・学費などと区別する
相続税シミュレーション 贈与と相続のトータル負担を比較する

短期的な節税ではなく、10年単位の資産承継計画が重要です。

よくある質問(Q&A)

Q1:不動産の法人化は必ずした方が良いですか?

A:ケースによります。
法人化によって節税や分割がしやすくなる一方で、設立・維持コストも発生します。
税理士が「保有資産」「収益構造」「家族構成」をもとに総合判断することをおすすめします。

Q2:相続対策はいつ始めるのがベストですか?

A:遅くとも5年〜10年前から始めるのが理想です。
早めに動くことで、贈与の選択肢が増え、節税効果も高まります。

「節税」より「家族の安心」を優先する相続対策を

不動産オーナーの相続対策で最も大切なのは、“税金を減らすこと”ではなく、“家族が揉めないこと”です。
どんなに節税しても、資産が動かせなかったり、関係が壊れてしまっては本末転倒です。

税理士法人ビジョン・ナビでは、京都の不動産オーナー様に向けて
「数字」「感情」「将来設計」の3つをバランスよく整える総合的な相続サポートを行っています。

  • 納税資金の試算

  • 贈与・法人化の比較分析

  • 家族全員が納得できる分割シミュレーション

安心して次世代へ資産を引き継ぐために、今から準備を始めましょう。

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税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。