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ホールディングスの失敗事例に学ぶ、中小企業が気をつけるべきポイント

税理士 林遼平

税理士 林遼平

「ホールディングス化」は成長戦略?それとも落とし穴?

「複数の事業が軌道に乗ってきたし、そろそろホールディングス化を考えたい」「他社もやっているし、成長には必要なステップなのでは?」と感じたことはありませんか?

実際、ホールディングス化は企業の発展や節税、事業の独立性向上など、多くのメリットを秘めています。しかしその一方で、準備不足や制度の理解不足から“逆に事業が混乱してしまった”という失敗事例も少なくありません。

本記事では、実際にあったホールディングスの失敗事例を交えながら、よくある落とし穴と回避するためのポイントを分かりやすく解説します。

この記事で得られるメリット:

  • ホールディングス化の失敗事例とその原因が分かる

  • 自社が陥りやすいポイントに気づける

  • 事前準備や相談の重要性を再認識できる

そもそもホールディングスとは?|仕組みと目的をおさらい

ホールディングスの基本構造

ホールディングス(持株会社)とは、複数の事業会社を傘下に持つ親会社のことを指します。自社が直接事業を行うのではなく、グループ全体の経営管理・戦略策定に特化する体制になります。

例:持株会社「Aホールディングス株式会社」
├ 事業会社①「A食品株式会社」
└ 事業会社②「A物流株式会社」

このように、法人を分割することで、責任や経営判断の分離・集中がしやすくなります。

h3:中小企業がホールディングス化を目指す理由

  • 節税(グループ内取引や所得分散)

  • 事業ごとの独立性向上

  • 事業承継やM&Aへの備え

  • リスク分散

などがよくある目的ですが、「手段が目的化」してしまうことで失敗に繋がるケースもあります。

ホールディングスの失敗事例とその要因

事例①「節税目的だけで設立→グループ全体の税負担が増加」

ある中小企業では、顧問税理士の助言でホールディングスを設立。「法人税の節税ができる」と聞いて始めましたが、結局は管理部門の重複、役員報酬の増加、消費税の課税強化などがかえって税負担を増やす結果に。

ポイント: 節税は「副次的効果」として考えるべきであり、「ホールディングス=節税」ではない。

事例②「人材リソースの分散→意思決定の混乱」

成長企業であったB社は、事業の分社化と同時にホールディングス化。ところが、幹部人材が各社に分散したことで意思決定が遅くなり、グループ全体のスピード感が低下

さらに、本社(持株会社)の役割が不明確で「何をする組織なのか分からない」と社員が混乱。

ポイント: 組織構造に合わせた人事戦略と役割定義が不可欠。

ホールディングス化で失敗しないためのチェックリスト

チェック項目 内容
なぜホールディングス化したいのか? 明確な目的を整理する
各会社の機能や役割は明確か? 経営管理機能、事業運営機能を分離
人材の配置は適切か? 幹部・現場のバランスを考慮
コストとリスクは把握しているか? 設立・維持費用、税務面の変化など
専門家に相談しているか? 税務・労務・法務の横断的視点が重要

よくある質問Q&A

Q1. ホールディングス化はどの規模から検討すべき?

A. 組織規模に明確な基準はありませんが、「複数の異なる事業を展開している」「将来的に事業承継やM&Aを視野に入れている」場合には検討の価値があります。ただし、形だけのホールディングス化は失敗リスクが高まるため、慎重な判断が必要です。

Q2. 持株会社の役割って何をすればいいの?

A. 経営戦略の立案、グループ全体の方針管理、財務コントロール、ガバナンス強化などが主な役割です。中小企業の場合でも、形骸化しないように「本社機能」を明確に設計することが求められます。

まとめ|ホールディングス化は“手段”であり、“目的”ではない

ホールディングスは確かに有効な組織再編手法ですが、安易な導入はかえって混乱やコスト増、組織の非効率を生むこともあります。

中小企業にとって重要なのは、「なぜやるのか?」という目的の明確化と、設計段階での慎重な準備です。

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税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。