1社依存のリスクを回避する|中小企業の売上分散戦略

税理士 林遼平

税理士 林遼平

こんにちは、税理士法人ビジョン・ナビです!

中小企業では、売上の大部分を1社に依存しているケースがあります。

  • 取引先A社が全売上の50%以上を占める

  • A社からの発注が減ると、経営に直結するリスクが大きい

  • 交渉力が取引先に偏り、利益率や契約条件に不利な影響

この状態は「1社依存」と呼ばれ、黒字でも経営が不安定になる重大リスクです。

この記事では、1社依存のリスクを回避し、中小企業が安定した売上を確保するための売上分散戦略を解説します。

なぜ1社依存は危険なのか?

  1. 取引先の状況に経営が左右される

    • 発注量の変動や契約終了で売上が急減

  2. 交渉力の低下

    • 価格交渉や条件変更に柔軟性がなく、利益率が下がる

  3. 資金繰りリスクの増大

    • 売上が集中することで、入金遅延が経営に直結

売上分散の具体策

【ステップ1】自社の売上依存度を「見える化」する

まずは、現在の売上構成を確認しましょう。
取引先ごとの売上比率をグラフ化し、「上位1〜3社が全体の何割を占めているか」を把握することが重要です。

  • 売上比率の例
     ┗ A社:60%/B社:20%/C社:10%/その他10%

  • 目安:1社の売上比率が30%を超えると要注意

見える化することで、依存リスクの大きさが一目で分かります。

【ステップ2】新規顧客を少しずつ増やす

依存を減らす最も確実な方法は、新規顧客を増やすことです。

  • 既存顧客からの紹介依頼(信頼度が高い)

  • 自社ホームページ・SNS・セミナーなどによる情報発信

  • 地域や業種をずらした顧客開拓

いきなり大口顧客を獲得する必要はありません。
小口でも複数の顧客を持つことで、全体の安定性が高まります。

【ステップ3】取引条件を見直し、契約リスクを減らす

大口取引先との契約条件を定期的に見直すことも重要です。

  • 契約期間の明確化(突然の打ち切り防止)

  • 支払サイトの短縮交渉(資金繰り安定)

  • 値下げ要請への対応ルールづくり

法律的な観点からも、契約書の整備はリスク管理に欠かせません。

【ステップ4】補助金・助成金を活用して新規事業に挑戦

新しい販路や商品を開発する際には、国や自治体の補助金・助成金を活用しましょう。

顧問の税理士や社労士に相談すれば、最新の制度も紹介してもらえます。

【ステップ5】定期的に売上構成をモニタリング

売上分散は「一度やって終わり」ではありません。
毎月または四半期ごとに売上構成を確認し、再び1社に偏っていないかチェックしましょう。

継続的に見直すことで、リスクを未然に防げます。

成功事例:製造業(社員25名)

課題

  • 売上の60%が1社依存

  • 発注量の減少で資金繰りが不安定

改善策

  • 新規顧客の開拓と既存顧客への提案営業

  • 長期契約の導入で収益安定化

  • 補助金を活用し、新規市場参入の初期投資を支援

成果

  • 主要取引先依存度を50%以下に低減

  • 売上が分散され、経営の安定性が向上

  • 新規取引先からの利益も確保でき、資金繰りリスクを軽減

よくある質問(Q&A)

Q1. 新規取引先開拓はリスクが高くないですか?
A. リスクを抑えるために、小口取引や段階的な受注拡大から始めることが有効です。

Q2. 主要取引先との関係を損なわずに依存度を下げる方法は?
A. 長期契約や安定的な受注を維持しつつ、新規取引先を追加することでバランスを取ります。

まとめ|1社依存リスクを回避して安定経営を実現

中小企業における1社依存は、黒字でも経営を不安定にする重大リスクです。
売上分析・新規取引先開拓・契約条件の見直し・補助金活用・定期モニタリングを組み合わせることで、リスクを低減できます。

税理士法人ビジョン・ナビでは、取引先分散や売上戦略に関する無料相談も承っています。
経営の安定化を図りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。