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持ち株比率をどう決める?中小企業経営で知っておくべきポイント

税理士 林遼平

税理士 林遼平

「共同で会社を設立したいけれど、持ち株比率はどう決めればいいのか…」
「親族で経営するけれど、将来トラブルにならないか不安…」

中小企業の経営者や起業を考える方にとって、持ち株比率の決め方は非常に重要なテーマです。なぜなら、持ち株比率は会社の意思決定権や利益配分に直結し、経営の安定性にも大きな影響を与えるからです。

この記事では、中小企業経営において押さえておくべき持ち株比率の基本知識、決め方のポイント、そして注意すべきリスクについてわかりやすく解説します。

持ち株比率とは?

株主の「力」を示す割合

持ち株比率とは、会社の発行済株式総数に対して、特定の株主がどれだけの株式を保有しているかを示す割合です。
例えば、発行済株式が100株で、そのうち40株を保有していれば、持ち株比率は40%となります。

持ち株比率が重要な理由

  • 議決権の強さを決める
     株主総会での議決は、持ち株比率に応じた票数で決まります。

  • 利益配分に影響する
     会社の利益を配当する際も、持ち株比率に応じて分配されます。

  • 経営権争いの火種になる
     特に共同経営では、比率の設定次第で将来的に意見対立が生じやすくなります。

持ち株比率を決めるときの基準

1. 経営権を誰が握るのか

会社の重要事項を決めるには、一定の議決権割合が必要です。代表的な基準は以下のとおりです。

  • 3分の2以上(66.7%):会社の定款変更や合併など特別決議が可能

  • 過半数(50%超):取締役選任など普通決議を可決可能

  • 3分の1超(34%以上):特別決議を阻止できる

このように、持ち株比率が数%変わるだけで、会社の意思決定の主導権が大きく変わります。

2. 出資額の公平性

出資した金額に応じて株式を配分するのが基本です。例えば、出資総額が1,000万円で、Aさんが600万円、Bさんが400万円を出資した場合、持ち株比率はAさん60%、Bさん40%となります。

3. 将来の事業展開を見据える

最初は少人数で始めても、将来的に新規株主や投資家を迎える可能性があります。その場合、創業者の持ち株比率が大きく下がらないよう設計することも大切です。

よくある持ち株比率の決め方

① 創業者が過半数を保有

代表者が意思決定をスムーズに行うため、51%以上を持つ形です。経営の安定性を重視する場合に多く採用されます。

② 出資額に応じて案分

公平性を優先し、出資額に比例して株式を分ける方法です。ただし代表者が過半数を持てないと、意思決定に支障が出るリスクがあります。

③ 3分の1以上を確保する

共同経営の場合、最低でも34%以上を確保しておけば、重要な特別決議を阻止できます。経営の「拒否権」を持つことになり、対等な立場を担保できます。

注意すべきリスク

  • 持ち株が拮抗すると経営が停滞
     例えば50%対50%の場合、意見が割れると決定できなくなります。

  • 親族間での対立
     相続などで株式が分散すると、経営権を巡る争いに発展することがあります。

  • 外部株主の影響力
     資金調達のために株を渡しすぎると、経営者が意思決定できなくなる恐れがあります。

ポイント整理(チェックリスト)

  • 持ち株比率は「議決権」「利益配分」に直結する

  • 過半数・3分の2など、法律上の基準を理解する

  • 出資額と経営権のバランスをどう取るかが重要

  • 将来の株主構成や相続も見据えて設計する

  • 50%対50%のような拮抗は避けるのが無難

よくある質問(Q&A)

Q1. 出資額が同額の場合、持ち株比率はどうすべきですか?
A. 同額出資で50%ずつにすると意思決定が停滞するリスクがあるため、51%と49%など、差をつけるのがおすすめです。

Q2. 持ち株比率は途中で変更できますか?
A. 増資や株式譲渡によって変更可能です。ただし、税務上の評価や株主間契約の調整が必要になるため、専門家への相談を推奨します。

まとめ

持ち株比率は、会社の経営権と将来の安定性を左右する非常に重要な要素です。単に出資額に応じて決めるのではなく、経営権の確保・公平性・将来の株主構成を見据えて設計する必要があります。

「共同経営で比率をどう設定すべきか」「相続で株式が分散しそうで不安」など具体的なお悩みは、ぜひ 税理士法人ビジョン・ナビの無料相談 をご活用ください。中小企業経営に精通した専門家が、最適な株式設計をサポートいたします。

税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。