中小企業の経営者と経理担当者が、オフィスで電気代の請求書、月次試算表、資金繰り表を確認している今風のビジネス向けイラスト。

電気代高騰で資金繰りが苦しい中小企業へ|補助金だけに頼らず粗利を月次で見直す方法

吉本亘

吉本亘

電気代やガス代の補助があると聞くと、会社の負担が少し軽くなるように感じます。

もちろん、毎月の請求額が少しでも下がることは、中小企業にとって大きな助けになります。
特に、製造業、飲食業、美容業、小売業、介護・福祉、宿泊業など、電気やガスを多く使う会社では、光熱費の増加が利益や資金繰りに直接影響します。

ただし、補助があっても、

「思ったほど資金繰りが楽にならない」
「売上はあるのに、手元にお金が残らない」
「利益は出ているはずなのに、納税や支払いの時期になると苦しい」
「電気代だけでなく、人件費や仕入も上がっている」

という会社も少なくありません。

電気代補助は、あくまで一部の負担をやわらげるものです。
会社の資金繰りを本当に安定させるには、補助金の有無だけでなく、粗利・固定費・納税予定・月次の数字をあわせて確認する必要があります。

この記事では、電気代高騰で資金繰りが苦しい中小企業向けに、補助金だけに頼らず、粗利を月次で見直す考え方を整理します。

電気代・ガス代補助の対象期間や請求書で確認したいポイントを先に知りたい方は、こちらの記事もあわせて確認してください。

関連記事:
2026年夏の電気代・ガス代補助は7〜9月に再開へ?中小企業が確認したい請求書と資金繰りのポイント

まず見るべきは「電気代がいくら増えたか」だけではない

電気代が上がると、どうしても請求書の金額だけに目が行きます。

たとえば、

  • 先月より電気代が高い
  • 去年の同じ月より光熱費が増えている
  • 補助があっても負担感が大きい
  • 毎月の支払いが読みにくい

という状態です。

もちろん、電気代そのものを確認することは大切です。
ただ、経営判断としては、電気代だけを見ても十分ではありません。

会社として本当に確認したいのは、次のような数字です。

確認する数字 見る理由
売上 電気代増加を吸収できる売上があるか
粗利 仕入や外注費を差し引いた後に利益が残っているか
電気代・ガス代 固定費・変動費としてどれくらい重くなっているか
人件費 光熱費以外の大きな負担が増えていないか
借入返済 利益が出ていても現金が減る原因になる
納税予定 消費税・法人税・源泉所得税などの支払いに備えられているか

つまり、電気代を見るときは、単独ではなく、粗利と資金繰りの中でどれくらい影響しているかを見る必要があります。

電気代補助だけでは解決しにくい会社の特徴

電気代やガス代の補助があっても、資金繰りが苦しい会社には共通点があります。

1. 粗利率が少しずつ下がっている

売上は変わらない、または増えているのに、仕入価格や外注費、材料費、光熱費が上がっている会社です。

この場合、売上だけを見ると悪くないように見えます。
しかし、売上から原価を引いた粗利が減っていれば、会社に残るお金は少なくなります。

特に、価格転嫁ができていない会社では、電気代補助があっても根本的な改善にはなりにくいです。

2. 電気代・ガス代を「毎月の経費」としてしか見ていない

電気代やガス代を、単に毎月の経費として処理しているだけでは、経営判断に使いにくくなります。

本来は、

  • 売上に対して電気代が何%か
  • 粗利に対して光熱費がどれくらい重いか
  • 前年同月と比べてどれくらい増えているか
  • 補助後でも利益を圧迫していないか

まで見る必要があります。

金額だけでなく、売上や粗利に対する割合で見ることが大切です。

3. 納税や社会保険料の支払いを月次で見られていない

資金繰りが苦しい原因は、電気代だけとは限りません。

実際には、

  • 消費税
  • 法人税
  • 源泉所得税
  • 住民税
  • 社会保険料
  • 労働保険料
  • 借入返済

などの支払いが重なって、手元資金が減ることがあります。

特に中小企業では、利益が出ていても、消費税や法人税の納付時期に資金繰りが苦しくなることがあります。

電気代補助で一時的に支払いが軽くなっても、納税予定を見落としていると、結局「お金が残らない」という状態になりやすいです。

4. 月次の数字が遅れている

月次の試算表が出るのが遅い会社では、電気代や原価の増加に気づくのも遅れます。

たとえば、6月の数字を8月や9月になってから見ていると、価格転嫁や経費見直しの判断が後手になります。

物価高の時期は、数字の変化が早いです。
だからこそ、月次の数字を早く確認できる体制が必要です。

確認する順番は「電気代」より先に粗利

電気代高騰で資金繰りが苦しいとき、最初に確認したいのは、実は電気代そのものではありません。

おすすめの順番は次の通りです。

1. 売上が増えているか、減っているか

まずは売上を確認します。

売上が増えているのに資金繰りが苦しいのか。
売上が減っていて資金繰りが苦しいのか。
ここで原因が変わります。

売上が減っている場合は、集客や販売数量の問題が大きいかもしれません。

一方で、売上が増えているのにお金が残らない場合は、粗利率や経費、納税、借入返済の影響を確認する必要があります。

2. 粗利が残っているか

次に見るのは粗利です。

粗利は、ざっくり言うと、売上から仕入や材料費などを差し引いた利益です。

たとえば、売上が増えていても、仕入価格や材料費、外注費が上がっていると、粗利が減っていることがあります。

電気代が上がっている会社では、光熱費だけでなく、仕入や人件費も上がっていることが多いです。

そのため、電気代だけを見て判断するのではなく、粗利がどれくらい残っているかを先に確認しましょう。

3. 電気代・ガス代が粗利をどれだけ圧迫しているか

粗利を確認したら、次に電気代・ガス代を見ます。

このときは、単純な金額だけでなく、

  • 前年同月比でどれくらい増えているか
  • 売上に対して何%か
  • 粗利に対して何%か
  • 補助後でも負担が重いか

を確認します。

たとえば、電気代が月10万円増えたとしても、粗利が十分に増えていれば吸収できるかもしれません。

一方で、粗利が減っている中で電気代が増えている場合は、早めに価格転嫁や経費構造の見直しが必要です。

4. 納税・社会保険料・借入返済の予定を見る

粗利と電気代を確認したら、最後に資金繰りを見ます。

ここで大事なのは、損益だけではなく、実際の支払い予定を見ることです。

特に確認したいのは、

  • 消費税の納付予定
  • 法人税の納付予定
  • 源泉所得税の納付予定
  • 社会保険料の支払い
  • 労働保険料の支払い
  • 借入返済
  • 賞与や給与の支払い

です。

利益が出ていても、これらの支払いが重なると、手元資金は減ります。

だからこそ、電気代補助だけを見るのではなく、月次で資金繰り表を作ることが大切です。

補助金がある時期こそ、月次管理を見直すチャンス

補助金や支援策があると、一時的に支払いが軽くなることがあります。

しかし、その期間に何もしなければ、補助が終わった後にまた同じ問題が出てきます。

大切なのは、補助があるうちに、

  • 粗利率が下がっていないか
  • 価格転嫁が必要か
  • 電気代・ガス代が利益を圧迫していないか
  • 納税予定に備えられているか
  • 月次の数字を早く確認できているか

を整理することです。

補助金は、経営を立て直すための時間を作ってくれるものです。
その時間を使って、数字の見方や経理体制を整えることが重要です。

価格転嫁を考える前に、月次で確認したいこと

電気代や仕入価格が上がっている場合、価格転嫁を検討する会社も多いと思います。

ただし、価格転嫁を考える前に、まずは数字を整理する必要があります。

確認したいのは、次の5つです。

1. どの商品・サービスの粗利が下がっているか

会社全体の粗利だけではなく、商品別・サービス別に見られると理想です。

どの商品で利益が出ていて、どの商品で利益が残りにくくなっているのかを確認します。

2. 電気代・ガス代の増加分をどこまで価格に反映できているか

電気代が上がっているのに、販売価格を据え置いている場合、会社がその負担をすべて吸収していることになります。

すぐに値上げできない場合でも、どれくらい負担が増えているかを数字で把握することが大切です。

3. 値上げ以外に見直せる経費はないか

価格転嫁だけでなく、経費の使い方も確認します。

ただし、必要な経費まで削りすぎると、売上や品質に影響することがあります。

見るべきなのは、単なる節約ではなく、利益に結びついていない支出です。

4. 納税資金を別で見込めているか

資金繰りが苦しい会社では、納税資金が後回しになりがちです。

しかし、消費税や源泉所得税、法人税などは、後から大きな支払いとして出てきます。

毎月の利益と一緒に、将来の納税予定も確認しましょう。

5. 試算表が経営判断に使えるタイミングで出ているか

月次の数字が遅いと、価格転嫁や資金繰りの判断も遅れます。

物価高や電気代高騰の影響を受けている会社ほど、試算表を早めに確認できる体制が重要です。

既存の補助記事からこの記事を読むべき会社

電気代・ガス代補助の記事を読んだ後、次のように感じた会社は、この記事の内容を確認しておくとよいでしょう。

  • 補助があっても、支払いの不安が残る
  • 電気代以外の経費も上がっている
  • 売上はあるのに、現金が残らない
  • 粗利が下がっている気がする
  • 納税や社会保険料の支払いが重なると苦しい
  • 月次の数字が遅く、判断が後手になっている

電気代補助は、経営の一部を助ける制度です。
ただし、会社全体の利益や資金繰りを改善するには、月次管理の見直しが欠かせません。

次に確認したいテーマ:利益は出ているのに現金が残らない会社へ

電気代高騰や物価高の影響は、電気代だけの問題ではありません。

売上や利益が出ているように見えても、実際には、

  • 仕入価格が上がっている
  • 人件費が増えている
  • 借入返済がある
  • 消費税や法人税の納付がある
  • 社会保険料の負担が重い
  • 価格転嫁が遅れている

といった理由で、手元資金が残らないことがあります。

このテーマについては、次の記事で詳しく整理します。

次に読みたい記事:
利益は出ているのにお金が残らない会社へ|物価高・納税・借入返済を月次で見直す方法

この記事では、電気代や仕入価格の上昇、人件費、納税予定まで含めて、会社のお金が残らない原因を整理します。

まとめ

電気代高騰で資金繰りが苦しいとき、補助金の有無を確認することは大切です。

しかし、補助金だけで会社の資金繰りが安定するとは限りません。

本当に確認すべきなのは、

  • 売上が増えているか
  • 粗利が残っているか
  • 電気代・ガス代が利益を圧迫していないか
  • 納税や社会保険料の支払いに備えられているか
  • 月次の数字を早く見られる体制があるか

という点です。

補助金は、経営を立て直すきっかけにはなります。
ただし、補助が終わった後も安定して会社を運営するには、粗利・経費・納税予定を月次で確認できる体制が必要です。

税理士法人ビジョン・ナビでは、中小企業の税務顧問だけでなく、月次管理、資金繰り、経理体制の見直しまでサポートしています。

電気代や物価高の影響で資金繰りに不安がある場合、また「売上はあるのにお金が残らない」と感じている場合は、早めに月次の数字を整理することが大切です。
自社の粗利や納税予定をどのように見ればよいか不安な方は、お気軽にご相談ください。

 

吉本亘
執筆者:吉本亘
吉本亘(よしもととおる)税理士法人ビジョン・ナビ所属。入社以来、税理士補助として中小企業・個人事業主の月次処理や決算・申告関連のサポート業務に携わる。数字を「経営判断に使える形」に整えることを意識し、実務の現場で起こりやすい勘違いやつまずきポイントを、わかりやすく整理して伝えることを重視している。現在は業務と並行して、事務所ブログの企画・改善にも取り組んでいる。