線引きが難しい経費の判断基準|どこまでが経費?迷いやすいポイントを整理サムネイル画像

線引きが難しい経費の判断基準|どこまでが経費?迷いやすいポイントを整理

税理士 林遼平

税理士 林遼平

この支出、経費にして大丈夫?

「この食事代は経費になる?」
「自宅兼事務所の家賃はどこまで計上できる?」
中小企業経営者や個人事業主の方から、経費の線引きについてのご相談は非常に多くあります。

経費は正しく計上すれば節税につながりますが、判断を誤ると税務調査で指摘されるリスクもあります。
大切なのは、“なんとなく”ではなく、一定の基準に沿って判断することです。

この記事では、
・経費になる基本的な考え方
・線引きが難しい具体例
・判断に迷ったときの整理方法

をわかりやすく解説します。

経費の基本的な判断基準とは?

「事業に関連しているか」が最も重要

経費として認められるかどうかの基本は、その支出が事業に関連しているかどうかです。

所得税法上、必要経費とは「その年の総収入金額を得るために直接要した費用」とされています。
参考:国税庁「必要経費とは」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm

つまり、売上を上げるため、事業を維持するために必要な支出であれば、原則として経費になります。

一方、プライベートな支出は経費になりません。
問題は、その“境界線”が曖昧なケースです。

「説明できるかどうか」が実務上のポイント

実務では、「税務署に合理的に説明できるか」が大きなポイントになります。

例えば、取引先との打ち合わせを兼ねた飲食代であれば交際費になりますが、家族との食事は経費にはなりません。

判断基準は感覚ではなく、「事業との関連性を客観的に説明できるか」です。
領収書の保存だけでなく、メモや日付・相手先の記録も重要になります。

線引きが難しい代表的な経費

① 飲食代・交際費

飲食代は最も判断が難しい項目です。

  • 取引先との打ち合わせ → 経費(交際費)
  • 社内会議の弁当代 → 会議費
  • 家族との食事 → 原則不可

重要なのは、「誰と、何の目的で」使ったかです。
目的が事業に関係していれば経費になりますが、曖昧な場合は否認リスクが高まります。

② 自宅兼事務所の家賃・光熱費

個人事業主で多いのが、自宅兼事務所の場合の按分(あんぶん)です。

例えば、

  • 使用面積割合
  • 使用時間割合

などを基準に、合理的に計算する必要があります。

ここで多い誤解は「だいたい半分」といった感覚的な按分です。
根拠が不明確だと、税務調査で修正される可能性があります。

③ 衣類・スーツ代

基本的に、スーツなど日常でも着用できる衣類は経費になりません。
一方で、作業着や制服など業務専用のものは経費になります。

「仕事で使っているからOK」と考えがちですが、“私用でも使えるかどうか”が判断基準になります。

判断に迷ったときの整理方法

① 3つの質問でチェックする

経費かどうか迷ったときは、次の3つを自問してみてください。

  1. 売上を得るために必要だったか?
  2. 事業に直接関係しているか?
  3. 第三者に合理的に説明できるか?

この3つに明確に「はい」と言えるなら、経費として認められる可能性は高いといえます。

② グレーな支出は慎重に扱う

「絶対ダメ」と「確実にOK」の間には、グレーゾーンがあります。

例えば、

  • 研修を兼ねた旅行
  • 自己啓発セミナー
  • 高額な接待費

こうした支出は、目的や内容によって判断が分かれます。

迷ったまま計上すると、後から修正が必要になることもあります。
不安がある場合は、事前に整理することが重要です。

ポイント整理|経費判断の基準

経費判断の基本

  • 事業との関連性があるか
  • 売上獲得・維持に必要か
  • 合理的な説明ができるか
  • 按分には明確な根拠があるか

【自社対応で問題ないケース】

  • 明らかに事業専用の支出
  • 取引先との打ち合わせ費用など目的が明確
  • 根拠ある按分計算ができている

この場合は、記録をしっかり残しておけば問題ないケースが多いです。

【専門家に確認した方が安心なケース】

  • プライベートとの境界が曖昧な支出
  • 高額な接待費や設備投資
  • 按分割合に自信がない

グレーな部分は、事前に確認しておくことで後のリスクを減らせます。

よくある質問(Q&A)

Q1:レシートがあれば必ず経費になりますか?

いいえ。レシートは証拠になりますが、それだけでは不十分です。
事業との関連性が説明できなければ、経費として認められない可能性があります。

Q2:少額なら問題になりませんか?

金額が小さくても、積み重なれば大きな金額になります。
少額だから大丈夫と考えるのではなく、基準を統一することが大切です。

Q3:税務調査ではどこまで見られますか?

業種や規模によりますが、売上や交際費、按分経費などは重点的に確認されることが多いです。
日頃から整理しておくことが安心につながります。

まとめ:経費の線引きは「根拠」がすべて

経費の判断で大切なのは、「なんとなく」ではなく、事業との関連性と合理的な根拠です。

  • 事業に必要か
  • 客観的に説明できるか
  • 記録が残っているか

この3点を意識するだけでも、判断の精度は大きく上がります。

もし「これはグレーかもしれない」と感じた場合は、一度確認することで不安を減らすことができます。
正しい線引きを意識しながら、安心できる経理体制を整えていきましょう。

税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。