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年末調整を忘れたらどうなる?会社・従業員への影響を解説

税理士 林遼平

税理士 林遼平

はじめに

「年末調整、気づいたら期限が過ぎていた…」
「一部の従業員の年末調整をやり忘れてしまったかもしれない」

年末から年始にかけて業務が立て込む中小企業では、こうした不安の声は決して珍しくありません。
年末調整は毎年行う業務とはいえ、「忘れたらどうなるのか」「取り返しがつかないのか」が分かりにくい手続きでもあります。

この記事では、

  • 年末調整を忘れた場合に起こること

  • 会社側・従業員側それぞれへの影響

  • 後からできる対応方法や注意点

を整理し、落ち着いて判断するための材料をお伝えします。

年末調整とは何をする手続きか

年末調整の基本的な役割

年末調整とは、会社が従業員に代わって1年間の所得税を正しく精算する手続きです。
毎月の給与では「概算」で所得税が天引きされていますが、扶養控除や保険料控除などを反映して最終的な税額を確定させるのが年末調整です。

この手続きを行うことで、

  • 税金の払い過ぎは還付

  • 足りない場合は追加徴収

という形で、年内に所得税が完結します。

年末調整が必要な人・不要な人

すべての従業員が対象になるわけではありません。
例えば、以下のようなケースでは年末調整の対象外となります。

  • 年収が2,000万円を超える人

  • 年の途中で退職し、再就職していない人

  • 副業の収入が主となる人

対象者の見極めも、実務では見落としやすいポイントです。
(参考:国税庁「年末調整のしかた」https://www.nta.go.jp)

年末調整を忘れた場合、会社に起こる影響

税務署からすぐに指摘される?

「忘れたらすぐに税務署から連絡が来るのでは?」と不安に思う方も多いですが、
即座にペナルティが発生するケースは多くありません

ただし、年末調整は法定義務であるため、

  • 調書提出時に不整合が出る

  • 源泉所得税の計算が合わない

といった形で、後から指摘される可能性はあります。

事務負担・信用面への影響

年末調整を忘れると、後から修正対応が必要になり、
結果的に通常より手間がかかるケースが少なくありません。

また、従業員から
「税金が戻るはずなのに戻らない」
と問い合わせを受けるなど、社内の信頼面に影響することもあります。

従業員側にはどんな影響がある?

税金を払い過ぎたままになる可能性

年末調整が行われない場合、
従業員は本来戻ってくるはずの所得税が還付されない状態になります。

特に、

  • 扶養控除

  • 生命保険料控除

  • 地震保険料控除

などがある場合、影響が大きくなりやすいです。

従業員が自分で確定申告するケース

会社で年末調整がされなかった場合でも、
従業員自身が確定申告を行えば、税金の精算は可能です。

ただし、

  • 確定申告の手間が増える

  • 申告方法が分からず不安になる

といった負担が従業員側に生じる点は、会社としても認識しておく必要があります。

年末調整を忘れたときの対応と注意点

後から年末調整はできる?

年末調整は、一定の期限内であればやり直しが可能です。
具体的には、翌年1月の源泉徴収票発行前後で対応できるケースもあります。

ただし、

  • すでに法定調書を提出している

  • 源泉所得税の納付が完了している

場合は、修正手続きが複雑になることがあります。

よくある勘違いと注意点

実務で多い勘違いとして、
「1人分だけだから問題ないだろう」
「従業員に確定申告してもらえばいい」
と判断してしまうケースがあります。

状況によっては問題にならないこともありますが、
会社側の処理として何が正しいかは一度整理してから判断する方が安心です。

ポイント整理|年末調整を忘れた場合

  • 年末調整は会社の法定義務

  • 忘れても即ペナルティとは限らない

  • 従業員は税金を払い過ぎる可能性がある

  • 確定申告での調整は可能だが負担が増える

  • 後から修正できるかはタイミング次第

「忘れた=終わり」ではなく、
現状に応じた対応方法を選ぶことが重要です。

よくある質問Q&A

Q1. 年末調整を完全に忘れた場合、罰則はありますか?

直ちに罰則が科されるケースは多くありませんが、是正を求められる可能性はあります。状況次第で対応が異なります。

Q2. 一部の従業員だけ忘れた場合も問題になりますか?

対象者であれば、1人分でも対応が必要です。後から修正できる場合もあります。

Q3. 従業員に確定申告してもらえば会社は何もしなくていい?

ケースによります。会社側の処理が必要な場合もあるため、注意が必要です。

まとめ

年末調整を忘れてしまった場合でも、
多くのケースでは冷静に対応すれば修正が可能です。

重要なのは、

  • 会社と従業員それぞれにどんな影響があるか

  • 今のタイミングで取れる選択肢は何か

を整理したうえで判断することです。

判断に迷う場合は、
専門家に一度確認するという選択肢もある
その程度のスタンスで考えてみると、不安を減らせるかもしれません。

税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。