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令和8年度税制改正大綱【法人税編】

税理士 林遼平

税理士 林遼平

「うちは関係あるの?」と感じた方へ

「税制改正って、結局は大企業の話でしょ?」
「中小企業や個人事業主にはあまり関係ないのでは?」

毎年このような声を、私たちは多くの経営者の方から耳にします。
しかし、令和8年度税制改正大綱(法人税編)は、これまでとは少し性格が異なります。

今回の改正は、
「何もしない会社」と「投資・賃上げを行う会社」では、税負担に明確な差が出る
そんなメッセージが強く打ち出されているのが特徴です。

この記事では、中小企業経営者・個人事業主の方に向けて、

  • 今回の法人税改正の全体像

  • 自社にどんな影響がありそうか

  • 今から何を考えておくべきか

を、できるだけ専門用語を避けながら分かりやすく解説します。

「知らなかった」で損をしないために、ぜひ最後までご覧ください。

令和8年度税制改正大綱【法人税編】の全体像

今回の改正のキーワードは「メリハリ」

令和8年度税制改正大綱の法人税分野では、これまでの
「広く薄く支援する減税」から、
「行動する企業を重点的に支援する税制」へと方向転換が示されています。

特に重視されているのは次の3点です。

  • 設備投資を行っているか

  • 賃上げに取り組んでいるか

  • 研究開発や将来投資を行っているか

これらに積極的な企業は税制面で優遇され、
そうでない企業は、これまで受けられていた税制優遇が使えなくなる可能性があります。

「法人税率そのもの」よりも行動が問われる時代へ

今回の大綱では、法人税率の引下げそのものよりも、

企業が利益を「貯め込む」のではなく
「投資・賃上げに回しているか」

が重視されています。

つまり、
決算書の数字だけでなく、会社の姿勢そのものが税務に影響する時代
に入ったといえるでしょう。

中小企業に特に影響が大きい改正ポイント

賃上げ促進税制は「中小企業だけ当面維持」

これまで多くの会社が活用してきた「賃上げ促進税制」ですが、
令和8年度改正では大きな見直しが入ります。

  • 大企業向け措置:前倒しで廃止

  • 中堅企業向け措置:要件を厳しくしたうえで将来廃止予定

  • 中小企業向け措置:令和8年度は現行制度を維持

教育訓練費に係る上乗せ措置が廃止されます。

人手不足が深刻な中小企業への配慮が明確に示されています。

ただし、「ずっと続く」とは明言されていません。
今後は、賃上げを「やっているかどうか」がより厳しく見られると考えておく必要があります。

少額減価償却資産の特例が拡充

中小企業にとって実務的にありがたい改正もあります。

  • 一括損金算入できる取得価額
    30万円未満 → 40万円未満

  • 適用期限は3年延長

パソコン・機械・設備更新などを検討している場合、
投資のタイミングを考えるうえで重要なポイントになります。

「何もしない会社」への影響が大きくなる理由

租税特別措置の「不適用措置」が強化

今回の法人税改正で、特に注意すべきなのが
租税特別措置の不適用措置の強化です。

簡単にいうと、

設備投資も賃上げもしない企業は
一定の税額控除を使えなくなる

という仕組みです。

これまで「毎年なんとなく使っていた税額控除」が、
条件を満たさないことで使えなくなる可能性があります。

実質的な「増税」になるケースも

税率が上がらなくても、

  • 控除が使えない

  • 特例が外れる

結果として、税額が増える=実質的な増税になるケースも考えられます。

「利益は出ているのに、税金が増えた」という事態を防ぐためにも、
事前の税務戦略がより重要になっています。

今から中小企業経営者が考えておくべきこと

決算対策だけでなく「中期視点」を持つ

これからの法人税対策は、

  • 決算前だけ考える

  • 節税だけを目的にする

というやり方では通用しにくくなります。

重要なのは、

  • いつ設備投資をするのか

  • 賃上げをどう位置づけるのか

  • 数年単位でどう会社を成長させるのか

といった中期的な視点です。

税理士と「経営の話」ができているか

税制改正の影響を正しく受け止めるには、
数字だけでなく経営の方向性を理解している税理士の存在が欠かせません。

「税金の計算だけ」ではなく、
経営と税務をセットで相談できるかどうかが、今後の差につながります。

ポイント整理|今回の法人税改正を一言で

  • ✔ 投資・賃上げを行う企業は優遇

  • ✔ 中小企業向け配慮はあるが永続ではない

  • ✔ 何もしない企業は税負担増の可能性

  • ✔ 節税から「戦略型税務」への転換が必要

よくある質問Q&A

Q1.赤字の中小企業でも影響はありますか?

A.はい、あります。
現在は赤字でも、将来黒字になった際に使える繰越控除や特例の条件に影響する可能性があります。早めの確認が重要です。

Q2.設備投資や賃上げを必ずしないとダメですか?

A.「必ず」ではありませんが、
何もしない場合の不利は確実に大きくなると考えた方が安全です。規模に合った形での対応がポイントです。

まとめ|「知らなかった」では済まされない時代へ

令和8年度税制改正大綱【法人税編】は、
中小企業にとっても決して他人事ではありません。

  • 税金は「結果」

  • 行動が「評価」される

そんな時代が本格的に始まっています。

「自社はどう影響を受けるのか?」
「今、何を準備しておくべきか?」

少しでも不安があれば、早めの確認がおすすめです。

税理士法人ビジョン・ナビでは、
税制改正を踏まえた中小企業向けの無料相談を実施しています。

お気軽にご相談ください。
▶︎ 国税庁:税制改正情報
https://www.nta.go.jp

税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。