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後継者が決まらない場合の選択肢|中小企業が今から考えるべき現実的な道筋

税理士 林遼平

税理士 林遼平

 

後継者がいない=廃業、ではありません

「子どもは継ぐ気がない」
「社内に任せられる人材がいない」
「このまま自分の代で終わるしかないのか」

後継者が決まらないことに不安を感じている経営者の方は少なくありません。
しかし、後継者不在=即廃業というわけではありません。

現在は、親族以外への承継や第三者への譲渡など、さまざまな選択肢があります。
重要なのは、何も決まっていない段階でも、方向性を整理しておくことです。

この記事では、後継者が決まらない場合の主な選択肢と、それぞれの特徴・注意点をわかりやすく解説します。

後継者が決まらない現状を整理する

まずは「なぜ決まらないのか」を明確にする

後継者がいないと一言でいっても、状況はさまざまです。

  • 親族はいるが意思がない
  • 社内に人材はいるが資金がない
  • 会社の将来性に不安がある
  • まだ考えるタイミングではないと思っている

原因によって、取るべき選択肢は変わります。
感覚的に「難しい」と感じている場合も、要因を分解すると具体的な対策が見えてきます。

時間があるかどうかで選択肢は変わる

事業承継は数年単位で準備するのが理想です。
経営者が元気なうちに動けるかどうかで、選択肢の幅は大きく変わります。

急な病気や事故など、想定外の事態が起きると、交渉や準備の時間が取れなくなります。
後継者が決まっていなくても、早めに情報収集を始めることが重要です。

参考:中小企業庁「事業承継ガイドライン」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/

選択肢① 社内承継(役員・従業員への引き継ぎ)

幹部社員への承継という方法

親族がいない場合でも、社内の役員や幹部社員に承継する方法があります。
事業内容や顧客との関係を理解しているため、引き継ぎが比較的スムーズです。

ただし、問題になりやすいのが株式取得の資金です。
後継者が株式を買い取るには資金が必要であり、金融機関の協力が不可欠なケースもあります。

メリットと注意点

メリット

  • 社内の混乱が少ない
  • 企業文化を維持しやすい

注意点

  • 資金負担
  • 経営能力の見極め
  • 従業員との関係調整

「人材はいるが資金面が不安」というケースでは、早めの計画設計が重要になります。

選択肢② 第三者承継(M&A)

外部への事業譲渡という現実的な方法

近年増えているのが、第三者への事業承継、いわゆるM&Aです。
後継者がいなくても、外部の企業や個人が事業を引き継ぐことができます。

小規模事業でもマッチングサービスが増えており、選択肢は広がっています。

M&Aの特徴と注意点

メリット

  • 後継者不在でも継続可能
  • 創業者利益を得られる可能性

注意点

  • 従業員の雇用条件
  • 企業価値評価
  • 情報管理

価格だけでなく、「誰に引き継ぐか」が重要です。
会社の理念や従業員の将来を含めて考える必要があります。

選択肢③ 廃業という決断

廃業も一つの経営判断

後継者が決まらない場合、廃業を選ぶこともあります。
決して失敗ではなく、状況によっては合理的な選択です。

ただし、廃業にも費用や手続きが発生します。

  • 解散・清算手続き
  • 税務申告
  • 従業員対応

事前に整理しておくことで、混乱を防げます。

廃業を避けられるケースもある

「後継者がいないから廃業」と思い込んでいるケースでも、
実は社内承継やM&Aの可能性が残っている場合があります。

情報不足のまま決断するのではなく、選択肢を整理してから判断することが重要です。

ポイント整理|後継者が決まらない場合の判断軸

主な選択肢

  • 社内承継(役員・従業員)
  • 第三者承継(M&A)
  • 廃業

判断のポイント

  • 承継までの時間はあるか
  • 会社の収益性はどうか
  • 従業員の雇用を守りたいか
  • 自身の引退時期はいつか

【自社対応で問題ないケース】

  • まだ引退まで時間がある
  • 候補者がある程度見えている
  • 会社の財務状況が安定している

この場合は、情報収集と計画作りから始める段階といえます。

【専門家に確認した方が安心なケース】

  • 後継者候補が全くいない
  • 株式評価や税金が不安
  • M&Aを検討している
  • 会社の業績が厳しい

税務・法務・資金面が絡むため、一度整理することで不安を減らせます。

よくある質問(Q&A)

Q1:後継者がいないと必ず廃業になりますか?

いいえ。社内承継や第三者承継などの選択肢があります。
最近は中小企業向けのM&A支援も増えています。

Q2:M&Aは大企業だけの話ではないですか?

以前はその傾向がありましたが、現在は小規模企業でも事例が増えています。
事業規模や業種によって可能性は異なります。

Q3:今すぐ決める必要がありますか?

すぐに決断する必要はありませんが、方向性の整理は早い方が有利です。
時間があるほど選択肢は広がります。

まとめ:後継者が決まらなくても、選択肢はある

後継者がいない状況は、不安を感じるものです。
しかし、社内承継・第三者承継・廃業など、複数の道があります。

大切なのは、
「何も決まっていないから動けない」のではなく、
選択肢を知ったうえで考えることです。

もし方向性に迷いがある場合は、一度状況を整理することで見える景色が変わります。
焦らず、現実的な道筋を検討していきましょう。

税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。