中小企業の経営者と税務・労務の専門家が、子ども・子育て支援金の会社負担、法定福利費、賞与、資金繰りを資料で確認している落ち着いたビジネスイラスト。

子ども・子育て支援金の会社負担はいくら?法定福利費・賞与・資金繰りへの影響を中小企業向けに解説

吉本亘

吉本亘

子ども・子育て支援金について、従業員の給与明細や控除額に注目が集まりやすい一方で、会社側にも負担があることは見落とされがちです。

経営者や経理担当者の方の中には、

「会社負担はいくら増えるのか」
「法定福利費としてどれくらい見ておけばよいのか」
「賞与支給時にも影響するのか」
「資金繰り表には反映しておくべきなのか」

と気になっている方もいるのではないでしょうか。

子ども・子育て支援金は、1人あたりで見ると大きな金額に見えないかもしれません。
しかし、従業員数が多い会社や賞与を支給している会社では、年間で見ると法定福利費や資金繰りに少しずつ影響します。

この記事では、子ども・子育て支援金の会社負担の考え方、法定福利費・賞与・資金繰りへの影響を、中小企業向けに整理します。

まず結論:会社負担は「標準報酬月額 × 支援金率 × 2分の1」で考える

こども家庭庁の案内では、被用者保険に加入している人の支援金額は、標準報酬月額×支援金率で計算されます。令和8年度の被用者保険の一律の支援金率は**0.23%**で、基本的に支援金額の半分は企業が負担するとされています。

つまり、会社負担の目安は次のように考えます。

項目 計算イメージ
標準報酬月額 300,000円
令和8年度の支援金率 0.23%
支援金額の合計 690円
会社負担の目安 345円
従業員負担の目安 345円

計算式にすると、
300,000円 × 0.23% ÷ 2 = 345円
です。

ただし、これは説明用の概算です。実際の金額は、従業員ごとの標準報酬月額、賞与の有無、端数処理、給与計算ソフトの仕様などによって確認が必要です。

会社側で特に大切なのは、従業員1人あたりの金額だけでなく、会社全体で年間いくらの法定福利費増加になるのかを見ることです。

子ども・子育て支援金の会社負担はいくら増える?従業員数別に試算

会社負担のイメージをつかむために、平均標準報酬月額を30万円と仮定して、従業員数別に試算してみます。

従業員数 平均標準報酬月額 会社負担の月額目安 年間目安
10人 300,000円 約3,450円 約41,400円
30人 300,000円 約10,350円 約124,200円
50人 300,000円 約17,250円 約207,000円

1人あたりで見ると、月数百円程度に見えるかもしれません。
しかし、従業員数が増えるほど、会社負担は積み上がります。

また、令和8年度の支援金率は0.23%ですが、制度は段階的に導入されるため、翌年度以降の料率や会社負担額も確認していく必要があります。こども家庭庁も、令和8年度から制度を開始し、段階的に導入していく仕組みとして説明しています。

ここで重要なのは、子ども・子育て支援金だけを単独で見るのではなく、他の人件費増加要因とあわせて見ることです。

たとえば、

  • 最低賃金の上昇
  • 社会保険適用拡大
  • 106万円の壁への対応
  • パート・アルバイトの勤務時間増加
  • 賞与支給
  • 採用や定着のための給与見直し

などが重なると、会社全体の人件費・法定福利費は少しずつ増えていきます。

単体では小さく見える負担でも、月次でまとめて見ると、利益や手元資金に影響することがあります。

賞与支給時にも子ども・子育て支援金はかかる

子ども・子育て支援金は、毎月の給与だけでなく、賞与支給時にも確認が必要です。

こども家庭庁のQ&Aでは、企業の従業員について、給料だけでなくボーナスからも支援金を拠出すると説明されています。

たとえば、賞与50万円を支給する従業員がいる場合、令和8年度の支援金率0.23%で考えると、会社負担の概算は次のようになります。

項目 計算イメージ
賞与額 500,000円
支援金率 0.23%
支援金額の合計 1,150円
会社負担の目安 575円

1人あたりでは大きく見えにくいですが、賞与支給人数が多い場合は合計額が増えます。

たとえば、賞与50万円を30人に支給する場合、会社負担の概算は、

575円 × 30人 = 17,250円

です。

夏季賞与や冬季賞与の時期は、給与だけでなく、

  • 賞与そのものの支払い
  • 社会保険料
  • 源泉所得税
  • 住民税
  • 子ども・子育て支援金
  • 納税や借入返済

などが重なりやすくなります。

そのため、賞与支給前には「賞与額」だけでなく、会社負担分の社会保険料や支援金も含めて、資金繰りを確認しておくことが大切です。

なお、給与明細での表示や従業員への説明については、以下の記事で詳しく整理しています。

関連記事:給与明細の「子ども・子育て支援金」とは?会社が従業員に説明したい控除・給与計算のポイント

法定福利費として月次で見落としやすいポイント

子ども・子育て支援金は、会社側から見ると、法定福利費に関係するテーマです。

毎月の給与計算では正しく処理できていても、月次試算表や資金繰り表で見えていなければ、経営判断にはつながりにくくなります。

特に中小企業では、次のような見落としが起こりやすいです。

見落としやすい点 会社への影響
給与計算だけで確認している 月次の法定福利費増加が見えにくい
賞与支給時の会社負担を見込んでいない 支払い時期に資金が不足しやすい
従業員数が増えた影響を集計していない 年間負担が思ったより増える
社会保険適用拡大と分けて考えている 人件費全体の増加を把握しにくい
月次試算表の作成が遅れている 判断が後手に回りやすい

支援金だけを見れば、会社負担は小さく感じるかもしれません。

しかし、給与や賞与、社会保険料、税金の支払いが重なると、手元資金の動きは大きくなります。利益が出ている会社でも、支払いのタイミングによっては「思ったより現金が残らない」と感じることがあります。

ビジョンナビでは、こうした制度改正や新しい負担を、単なる給与計算の変更ではなく、月次管理・資金繰り・人件費の見える化につなげて考えることが大切だと考えています。

中小企業が確認したい給与計算・資金繰りのポイント

子ども・子育て支援金への対応では、給与計算だけでなく、経理体制として次の点を確認しておくと安心です。

確認項目 内容
給与ソフト 支援金の計算・表示に対応しているか
標準報酬月額 従業員ごとの計算基礎が正しいか
賞与計算 賞与支給時の支援金が反映されているか
法定福利費 会社負担分を月次で把握できているか
資金繰り表 給与・賞与・社会保険料・税金の支払い時期を見込んでいるか
社内説明 従業員から質問があったときに説明できるか

自社で整理しやすいのは、給与ソフトが制度対応済みで、月次試算表や資金繰り表を定期的に確認できているケースです。

一方で、次のような場合は、一度専門家に確認した方が安心です。

  • 賞与支給額が大きい
  • 従業員数が多い
  • パート・アルバイトの社会保険加入が増えそう
  • 106万円の壁や130万円の壁への対応も同時に進めている
  • 法定福利費の増加が月次で見えていない
  • 資金繰り表を作成していない
  • 給与計算と会計処理の連動に不安がある

特に、社会保険適用拡大やパートの働き方見直しが関係する会社では、支援金だけでなく、社会保険料全体の会社負担を見ておく必要があります。

よくある質問

Q1. 子ども・子育て支援金の会社負担はどのように計算しますか?

被用者保険の場合、支援金額は標準報酬月額に支援金率をかけて計算されます。令和8年度の支援金率は0.23%で、基本的にその半分を企業が負担します。たとえば標準報酬月額30万円の場合、会社負担は月345円が目安です。

Q2. 賞与からも会社負担は発生しますか?

はい。企業の従業員については、給与だけでなくボーナスからも支援金を拠出するとされています。賞与支給時には、社会保険料とあわせて会社負担分も確認しておくと安心です。

Q3. 子ども・子育て支援金は法定福利費になりますか?

会社負担分は、社会保険料等と同じく法定福利費として整理することが考えられます。ただし、実際の会計処理や給与計算ソフト上の表示は会社の処理方法によって異なる場合があるため、顧問税理士や社労士に確認しておくと安心です。

Q4. 会社負担が少額なら、資金繰り表に入れなくてもよいですか?

1人あたりでは少額に見えるかもしれませんが、従業員数や賞与支給額によっては年間で一定の金額になります。また、社会保険料や税金、賞与支給と同じ時期に資金が出ていくため、資金繰り表には反映しておく方が管理しやすくなります。

まとめ:会社負担は小さく見えても、人件費全体で確認する

子ども・子育て支援金は、従業員の給与明細だけでなく、会社側の法定福利費にも関係します。

令和8年度の被用者保険の支援金率は0.23%で、基本的に支援金額の半分は企業が負担します。
また、毎月の給与だけでなく賞与からも支援金を拠出するため、賞与支給時の資金繰りにも注意が必要です。

会社側で確認したいポイントは、次のとおりです。

  • 会社負担額がどれくらい増えるのか
  • 給与だけでなく賞与にも反映されているか
  • 法定福利費として月次で把握できているか
  • 給与・社会保険料・税金・賞与の支払い時期を資金繰り表に反映できているか
  • 106万円の壁や社会保険適用拡大など、人件費増加要因とあわせて見られているか

制度改正による負担は、1つひとつは小さく見えることがあります。
しかし、人件費、法定福利費、賞与、納税、資金繰りを一体で見ると、会社の利益や手元資金に影響していることがあります。

ビジョンナビでは、税務・会計の視点に加えて、社労士事務所としての労務面も踏まえながら、給与計算、社会保険料、法定福利費、月次管理、資金繰りを一体で整理するサポートを行っています。

「子ども・子育て支援金の会社負担をどのように見ればよいか分からない」
「賞与支給時の社会保険料や法定福利費まで資金繰りに反映できていない」
「人件費は増えているが、どこで負担が増えているのか月次で見えていない」

このような場合は、給与計算だけで終わらせず、月次の数字と資金繰りまで含めて一度整理してみると、今後の判断がしやすくなります。

吉本亘
執筆者:吉本亘
吉本亘(よしもととおる)税理士法人ビジョン・ナビ所属。入社以来、税理士補助として中小企業・個人事業主の月次処理や決算・申告関連のサポート業務に携わる。数字を「経営判断に使える形」に整えることを意識し、実務の現場で起こりやすい勘違いやつまずきポイントを、わかりやすく整理して伝えることを重視している。現在は業務と並行して、事務所ブログの企画・改善にも取り組んでいる。