夏季賞与やボーナスは、従業員にとって大切な支給である一方、会社にとっては一時的に大きな資金が動くタイミングです。
「できれば賞与を出したい」「従業員の頑張りに応えたい」と考えていても、支給後の社会保険料や税金、借入返済、通常の固定費まで含めると、資金繰りに不安を感じる会社もあるのではないでしょうか。
賞与は、従業員へ振り込む金額だけを見て判断すると、支給後に思った以上に資金が減ってしまうことがあります。特に中小企業では、月次の数字や今後の支払い予定が整理されていないと、「賞与を出した後に税金や社会保険料の支払いが重なった」という状況になりやすいです。
この記事では、夏季賞与・ボーナスを支給する前に、中小企業が確認したい人件費、税金、社会保険料、資金繰りの見方を整理します。
夏季賞与は「支給額」だけで判断しない
夏季賞与を支給する前にまず確認したいのは、従業員へ支給する賞与額だけではありません。
賞与を支給すると、従業員への振込額のほかに、会社負担の社会保険料や雇用保険料、源泉所得税の納付、通常の給与・家賃・借入返済なども続きます。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 賞与支給額 | 従業員へ支給する額面・振込額 |
| 会社負担の社会保険料 | 健康保険・厚生年金保険などの会社負担分 |
| 雇用保険料 | 労働者負担分だけでなく、事業主負担分も確認 |
| 源泉所得税 | 賞与から控除した所得税の納付 |
| 通常の固定費 | 給与、家賃、仕入、外注費、借入返済など |
| 今後の税金 | 法人税、消費税、住民税、予定納税など |
例えば、雇用保険料率は年度や事業の種類によって変わります。令和8年度の一般の事業では、労働者負担は5/1,000、事業主負担は8.5/1,000、合計13.5/1,000とされています。
従業員の手取り額だけでなく、会社が追加で負担する金額まで含めて見ることが、賞与支給前の資金繰り確認では重要です。
賞与支給後に発生する支払いを確認する
賞与は、支給日に振り込んで終わりではありません。支給後にも、社会保険料や源泉所得税などの支払いが発生します。
社会保険料の納付
賞与にかかる社会保険料は、実際に支払われた賞与額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」をもとに計算され、事業主と被保険者が折半で負担します。賞与にかかる保険料は、毎月の保険料と合算されて賞与支払月の翌月の納入告知書等で通知され、月末までに納入する流れです。
つまり、賞与を支給した月だけでなく、翌月の社会保険料納付まで見ておく必要があります。
源泉所得税の納付
賞与から控除した源泉所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納付します。給与の支給人員が常時10人未満で納期の特例を受けている場合は、1月から6月までに源泉徴収した分を7月10日、7月から12月までに源泉徴収した分を翌年1月20日までにまとめて納付します。夏季賞与の支給月によって納付時期が変わるため、自社が納期の特例を受けているかも確認しておきましょう。
賞与支給後の資金繰りを見るときは、「賞与を支給できるか」だけでなく、「その後の納付資金まで残せるか」を確認しておくことが大切です。
なお、賞与支払届や社会保険料、源泉所得税など、賞与支給時の手続き全体を確認したい場合は、以下の記事で詳しく整理しています。
夏季賞与の支給手続きチェックリスト|賞与支払届・社会保険料・源泉所得税の注意点
資金繰りでは「利益」ではなく「現金」を見る
賞与支給前に見落としやすいのが、利益と現金の違いです。
決算書や試算表上では利益が出ていても、実際の預金残高が十分にあるとは限りません。売掛金の回収がまだ先だったり、借入返済や税金の納付、仕入や外注費の支払いが重なったりすると、利益は出ているのに資金繰りが苦しくなることがあります。
賞与支給前には、次のような数字を確認しておくと判断しやすくなります。
| 確認する数字 | 見るポイント |
|---|---|
| 現在の預金残高 | 賞与支給後にどれくらい残るか |
| 入金予定 | 売掛金の回収予定、補助金、借入予定など |
| 支払い予定 | 仕入、外注費、家賃、給与、借入返済 |
| 税金・社会保険料 | 法人税、消費税、源泉所得税、社会保険料 |
| 最低限残したい資金 | 通常運転に必要な手元資金 |
特に中小企業では、社長の感覚で「これくらいなら出せそう」と判断することもあります。ただ、賞与はまとまった支出になるため、支給後1〜3か月の資金繰りまで見て判断した方が安心です。
中小企業が賞与支給前に確認したいチェックリスト
夏季賞与・ボーナスを支給する前には、次のようなチェックリストで整理すると分かりやすくなります。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 賞与総額を把握しているか | 額面、振込額、対象者を整理する |
| 会社負担分を見込んでいるか | 社会保険料・雇用保険料の会社負担分を含める |
| 源泉所得税の納付時期を確認しているか | 原則翌月10日、納期の特例の有無も確認 |
| 今後3か月の支払い予定を一覧にしているか | 税金、社会保険料、借入返済、固定費を確認 |
| 賞与支給後の預金残高を見ているか | 最低限残したい資金を下回らないか |
| 月次試算表が直近まで反映されているか | 利益と現金のズレを確認する |
このチェックリストで大切なのは、賞与だけを単独で見ないことです。
賞与を支給する月は、人件費が大きく増えます。そのうえで、翌月以降に社会保険料や税金の納付が続くため、月次試算表や資金繰り表への反映が遅れると、判断が後手に回りやすくなります。
自社で整理しやすいケース・相談した方がよいケース
賞与支給前の資金繰り確認は、自社で整理できる場合もあります。
例えば、次のような状態であれば、社内でも比較的確認しやすいでしょう。
- 支給対象者と支給額が決まっている
- 現在の預金残高を確認できている
- 今後の入金予定と支払い予定を一覧にできている
- 直近の月次試算表がある
- 税金や社会保険料の納付予定を把握できている
一方で、次のような場合は、一度専門家に確認した方が安心です。
- 賞与支給後の資金繰りが不安
- 税金や社会保険料の支払い予定が整理できていない
- 月次試算表の作成が遅れている
- 利益は出ているのに現金が少ない
- 賞与額をどこまで出してよいか判断に迷う
- 役員賞与や決算賞与も検討している
- 経理担当者だけで資金繰り判断をするのが難しい
賞与は、従業員のモチベーションにも関わる大切な支給です。だからこそ、無理に削るかどうかではなく、「どこまでなら会社にお金を残しながら支給できるか」を数字で確認することが大切です。
よくある質問
Q. 夏季賞与を支給するとき、資金繰りでは何を確認すればよいですか?
賞与の振込額だけでなく、会社負担の社会保険料、雇用保険料、源泉所得税の納付、今後の税金、借入返済、固定費まで確認します。賞与支給後1〜3か月の預金残高を見ておくと判断しやすくなります。
Q. 利益が出ていれば賞与を支給しても大丈夫ですか?
利益が出ていても、現金が十分に残っているとは限りません。売掛金の回収時期、借入返済、税金の納付、設備投資などによって、利益と資金繰りはズレることがあります。
Q. 賞与の会社負担分も資金繰りに入れるべきですか?
入れる方がよいです。賞与には、従業員負担分だけでなく、会社負担の社会保険料や雇用保険料も発生します。支給額だけでなく、会社負担分を含めた総額で確認することが大切です。
Q. 賞与額を決める前に税理士へ相談した方がよいケースはありますか?
賞与支給後の資金繰りが不安な場合、納税予定が整理できていない場合、月次試算表の作成が遅れている場合は、一度確認した方が安心です。賞与額だけでなく、支給後の資金残高や納税資金まで含めて判断しやすくなります。
まとめ
夏季賞与・ボーナスを支給する前には、従業員への支給額だけでなく、会社負担の社会保険料、雇用保険料、源泉所得税、今後の税金や借入返済まで含めて確認することが大切です。
特に、賞与支給後には社会保険料や源泉所得税の納付が続きます。支給時点の預金残高だけでなく、支給後1〜3か月の資金繰りを確認しておくことで、無理のない賞与支給を判断しやすくなります。
また、利益が出ていても現金が残っているとは限りません。月次試算表や資金繰り表をもとに、賞与支給後に会社にどれくらいお金が残るのかを見える化しておくことが重要です。
「賞与を支給したいが、その後の資金繰りが不安」
「税金や社会保険料の支払いまで含めて判断したい」
「月次の数字をもとに、どこまで賞与を出せるか整理したい」
このような場合は、早めに数字を整理しておくと安心です。税理士法人ビジョン・ナビでは、月次の数字をもとにした資金繰り確認や納税予測のご相談も承っています。
