決算書や試算表を見ると、利益は出ている。
売上も大きく落ちているわけではない。
それなのに、通帳を見ると手元資金が思ったほど残っていない。
中小企業では、このような状態がよく起こります。
特に最近は、物価高の影響で、
- 仕入価格が上がっている
- 電気代・ガス代が高くなっている
- 人件費が増えている
- 社会保険料の負担が重い
- 借入返済が続いている
- 消費税や法人税の納付が大きい
といった負担が重なりやすくなっています。
そのため、会計上は利益が出ていても、実際には手元資金が増えていない会社も少なくありません。
この記事では、利益は出ているのにお金が残らない会社に向けて、物価高・納税・借入返済を月次でどう見直せばよいかを整理します。
「利益」と「現金」は同じではない
まず押さえておきたいのは、利益が出ていることと、現金が残っていることは別という点です。
たとえば、売上が100万円あり、仕入や経費を差し引いて利益が出ていたとしても、その売上がまだ入金されていなければ、手元のお金は増えていません。
また、借入金の返済は、元本部分が損益計算書の費用には出てきません。
しかし、実際には通帳からお金が出ていきます。
つまり、会社のお金を見るときは、利益だけでは不十分です。
見るべきなのは、
- 利益が出ているか
- 売掛金は回収できているか
- 在庫が増えすぎていないか
- 借入返済が重くなっていないか
- 納税予定に備えられているか
- 月末にどれくらい現金が残るか
です。
利益だけを見ていると、「黒字なのに資金繰りが苦しい」という状態に気づくのが遅れてしまいます。
物価高でお金が残りにくくなる理由
物価高の影響は、単に「経費が増える」という話だけではありません。
会社によっては、売上が増えているのに、手元に残るお金が減っていることもあります。
なぜなら、物価高の影響は複数の場所に出るからです。
1. 仕入や材料費が上がる
商品や材料を仕入れている会社では、仕入価格の上昇が粗利に直撃します。
たとえば、売上が変わらないまま仕入価格だけが上がると、粗利は減ります。
売上だけを見ると変化がなくても、会社に残る利益は少なくなっている可能性があります。
2. 電気代・ガス代が上がる
製造業、飲食業、美容業、小売業、介護・福祉、宿泊業などでは、電気代やガス代の増加が資金繰りに影響しやすくなります。
電気・ガス料金の負担軽減策があっても、それだけで会社全体の資金繰りが改善するとは限りません。
電気代・ガス代の支援策や請求書の見方を確認したい場合は、先にこちらの記事も参考になります。
関連記事:
2026年夏の電気代・ガス代補助は7〜9月に再開へ?中小企業が確認したい請求書と資金繰りのポイント
この記事では、電気代・ガス代の負担軽減策を確認するときに、会社が請求書や資金繰りで見ておきたいポイントを整理しています。
3. 人件費や社会保険料が増える
人を採用したり、給与を上げたりすると、人件費だけでなく社会保険料の会社負担も増えます。
従業員が増えている会社では、売上が伸びていても、給与・社会保険料・賞与・退職金などの支払いで現金が残りにくくなることがあります。
特に、毎月の人件費が増えているのに、月次で粗利や資金繰りを確認できていない会社は注意が必要です。
4. 借入返済で現金が出ていく
借入返済は、利益が出ていてもお金が残らない大きな理由の一つです。
元本返済は、会計上の利益には直接反映されません。
しかし、資金繰り上は毎月確実に現金が出ていきます。
そのため、試算表上は利益が出ていても、借入返済後の現金が少ないということがあります。
5. 納税資金を見込めていない
利益が出ている会社ほど、納税も発生します。
特に注意したいのは、
- 消費税
- 法人税
- 源泉所得税
- 住民税
- 社会保険料
- 労働保険料
などです。
これらは毎月同じタイミングで出ていくものばかりではありません。
消費税や法人税のように、まとまった金額で納付するものもあります。
源泉所得税の納期の特例や労働保険料の年度更新など、特定の時期に支払いが重なるものもあります。
「利益は出ているはずなのに、納税時期になると資金繰りが苦しい」という会社は、月次で納税予定を見込めていない可能性があります。
電気代高騰は、月次管理を見直すきっかけになる
電気代・ガス代の上昇は、資金繰り悪化の一つのきっかけです。
ただ、実際には電気代だけが問題とは限りません。
電気代の上昇をきっかけに、
- 粗利率が下がっていないか
- 価格転嫁が遅れていないか
- 人件費が増えすぎていないか
- 納税資金を確保できているか
- 借入返済後に現金が残っているか
- 月次の試算表が経営判断に使えているか
を確認することが大切です。
電気代高騰をきっかけに、粗利や月次管理の見直し方を整理したい場合は、こちらの記事もあわせて確認してください。
関連記事:
電気代高騰で資金繰りが苦しい中小企業へ|支援策だけに頼らず粗利を月次で見直す方法
この記事では、電気代やガス代の負担を、粗利・固定費・資金繰りの中でどう確認するかを整理しています。
月次で見るべき順番
利益は出ているのにお金が残らない会社は、月次で見る順番を決めておくと整理しやすくなります。
おすすめは、次の順番です。
1. 売上ではなく、まず粗利を見る
最初に見るべきなのは売上ではなく、粗利です。
売上が伸びていても、仕入や外注費、材料費が上がっていれば、会社に残る利益は減っている可能性があります。
確認したいのは、
- 売上は増えているか
- 粗利額は増えているか
- 粗利率は下がっていないか
- 商品別・サービス別に利益が残っているか
です。
売上が増えているのにお金が残らない場合、粗利率が下がっていないかをまず確認しましょう。
2. 固定費が増えていないか確認する
次に、固定費を見ます。
固定費には、たとえば次のようなものがあります。
- 家賃
- 人件費
- 社会保険料
- リース料
- 保険料
- 通信費
- システム利用料
- 顧問料
- 電気代・ガス代
会社の規模が大きくなると、固定費も増えやすくなります。
一度増えた固定費は、すぐには下げにくいものも多いです。
そのため、毎月の固定費が粗利に対して重くなりすぎていないかを確認する必要があります。
3. 借入返済後に現金が残るか見る
利益が出ていても、借入返済後に現金が残らない会社は少なくありません。
月次で見るときは、試算表の利益だけでなく、
営業で残ったお金から、借入返済をした後にいくら残るか
を確認することが大切です。
ここを見ていないと、利益が出ているのに通帳残高が増えない理由が分かりにくくなります。
4. 納税予定を先に見込む
納税は、資金繰りに大きく影響します。
特に消費税や法人税は、納付時期にまとまった金額が必要になることがあります。
月次で確認したいのは、
- 今期の利益見込み
- 消費税の納付見込み
- 法人税等の納付見込み
- 源泉所得税の納付予定
- 社会保険料・労働保険料の支払い予定
です。
納税予定を早めに見込めていれば、資金繰りの不安はかなり減らせます。
5. 価格転嫁が必要か判断する
粗利、固定費、借入返済、納税予定を見たうえで、価格転嫁を検討します。
価格転嫁は、単に値上げするかどうかの話ではありません。
- どの商品・サービスで利益が残っていないのか
- どの原価が上がっているのか
- どこまで価格に反映できているのか
- 値上げ以外に見直せる経費はないか
- 価格を変えた場合、資金繰りがどう変わるか
まで見て判断する必要があります。
数字を見ないまま価格転嫁を考えると、値上げすべき商品やサービスを間違える可能性があります。
「黒字なのに資金繰りが苦しい」会社でよくある状態
次のような状態がある会社は、早めに月次管理を見直した方がよいかもしれません。
- 売上は増えているのに、通帳残高が増えない
- 毎月の試算表が出るのが遅い
- 消費税や法人税の納付額が直前まで分からない
- 借入返済後の資金繰りを見ていない
- 粗利率の低下に気づくのが遅い
- 電気代や人件費の増加を価格に反映できていない
- 経理担当者が1人で、数字の確認が後回しになっている
- 社長が感覚で資金繰りを判断している
このような状態では、利益が出ていても、資金繰りの不安が残りやすくなります。
税理士に相談するなら、決算前ではなく月次の段階で
資金繰りの相談は、決算が近づいてからでは遅いことがあります。
決算直前になってから、
「思ったより利益が出ていた」
「消費税の納付額が大きい」
「法人税の支払いがきつい」
「借入返済を考えると現金が残らない」
と分かっても、できる対策は限られます。
だからこそ、利益・納税・借入返済・資金繰りは、月次の段階で確認しておくことが大切です。
税理士に相談するときも、単に申告書を作ってもらうだけではなく、
- 毎月の利益がどれくらい出ているか
- 納税見込みはいくらか
- 借入返済後に資金が残るか
- 価格転嫁が必要か
- 経理体制をどう整えるか
まで相談できると、経営判断に使いやすくなります。
経理代行・税務顧問・月次管理を見直すタイミング
利益は出ているのにお金が残らない会社では、税務顧問や経理代行の役割を見直すタイミングかもしれません。
たとえば、
- 経理担当者が入力作業だけで手一杯になっている
- 試算表が経営判断に使えるタイミングで出ていない
- 社長が資金繰りを感覚で見ている
- 納税見込みが直前まで分からない
- 税理士とのやり取りが決算・申告中心になっている
- 経理代行と税務顧問を別々に依頼していて、数字がつながっていない
という場合は、月次管理の体制を整えることで、会社のお金の見え方が変わる可能性があります。
大切なのは、いきなり大きな仕組みを作ることではありません。
まずは、毎月の粗利、固定費、納税予定、借入返済、手元資金を整理することです。
まとめ
利益は出ているのにお金が残らない原因は、一つではありません。
物価高による仕入や電気代の増加、価格転嫁の遅れ、借入返済、納税予定、売掛金の回収、在庫の増加など、複数の要因が重なっていることが多いです。
だからこそ、売上や利益だけを見るのではなく、月次で次の順番で確認することが大切です。
- 粗利が残っているか
- 固定費が増えすぎていないか
- 借入返済後に現金が残るか
- 納税予定に備えられているか
- 価格転嫁が必要か
税理士法人ビジョン・ナビでは、税務申告だけでなく、月次管理、資金繰り、経理体制の見直しまで、会社の成長段階に合わせてサポートしています。
「利益は出ているはずなのに、なぜかお金が残らない」
「納税や借入返済まで考えると、資金繰りが不安」
「月次の数字を経営判断に使える状態にしたい」
このようなお悩みがある場合は、まずは現在の数字の見え方を整理するところから始めてみてください。
自社だけで整理するのが難しい場合は、ビジョン・ナビまでお気軽にご相談ください。
