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令和8年度税制改正大綱【資産税編】

税理士 林遼平

税理士 林遼平

「相続対策、今のままで本当に大丈夫ですか?」

「不動産を活用した相続対策をしているけれど、このままで大丈夫だろうか…」
「法人名義の不動産や、事業承継の準備をそろそろ考えたい…」

中小企業経営者や個人事業主の方から、近年このようなご相談が増えています。
その背景にあるのが、令和8年度税制改正大綱【資産税編】です。

今回の税制改正では、

  • 不動産評価

  • 相続税・贈与税

  • 事業承継税制

といった「資産を持つ経営者ほど影響を受けやすい分野」に、大きな方向転換が示されています。

この記事では、
中小企業経営者・個人事業主の方が「今、何を見直すべきか」を軸に、
難しい税制改正をできるだけ分かりやすく解説します。

① 令和8年度税制改正大綱【資産税編】の全体像

資産税改正の基本スタンスは「公平性の重視」

令和8年度税制改正大綱の資産税編で、最も強く打ち出されているのは
「課税の公平性を確保する」という考え方です。

特に問題視されているのが、

  • 不動産評価の仕組みを利用した過度な節税

  • 一部の富裕層に有利な相続・贈与対策

これらに対して、「制度の趣旨に反する使われ方は是正する」という姿勢が明確に示されています。

中小企業経営者が影響を受けやすい理由

中小企業経営者や個人事業主は、次のような資産を保有しているケースが多くあります。

  • 事業用不動産(自社ビル・倉庫など)

  • 賃貸不動産

  • 自社株式

これらはすべて資産税(相続税・贈与税)の対象となるため、
今回の改正は「他人事ではない」内容と言えます。

② 貸付用不動産の評価見直し|相続対策への影響は?

なぜ「貸付用不動産」が見直されるのか

今回の資産税改正で、特に注目されているのが
貸付用不動産(賃貸不動産)の評価方法の見直しです。

これまで、相続税評価では

  • 路線価

  • 借家権割合
    などを使うことで、実際の市場価格よりも大幅に低い評価額になるケースがありました。

その結果、
「タワーマンション節税」などが社会問題化していたのです。

今後想定される実務への影響

大綱では、

  • 納税者の予測可能性に配慮しつつ

  • 市場価格との乖離を是正

すると明記されています。

つまり今後は、
「不動産を持っているだけで相続税が大きく下がる」時代は終わりに近づいている
と考えるべきでしょう。

👉 不動産を使った相続対策は、
「量」よりも「設計の質」が問われる時代に入っています。

③ 贈与税・相続税で押さえるべき重要改正点

教育資金の一括贈与は制度終了へ

これまで活用されてきた
教育資金の一括贈与(最大1,500万円非課税)は、
令和8年3月末で終了予定です。

理由としては、

  • 高所得層に利用が偏っている

  • 格差固定化につながる懸念

が挙げられています。

👉 既に活用を検討している方は、期限を意識した判断が必要です。

極端な節税スキームはリスクが高まる

今後は、

  • 「形式的には合法だが、実態として不自然」
    な相続・贈与対策は、税務上のリスクが高まると考えられます。

国税庁も、相続税の調査では
不動産評価や資産移転の経緯を重視しています。
(参考:国税庁 相続税の概要

④ 事業承継税制|「使えるうちに動く」が正解

特例承継計画の提出期限が延長

中小企業経営者にとって重要な
事業承継税制(特例措置)については、

  • 法人版:令和9年9月末まで

  • 個人版:令和10年9月末まで

と、計画提出期限が延長されました。

※制度の適用期限自体は延長されないことになっています。

ただし「恒久措置」ではない点に注意

今回の延長は、あくまで時限的措置です。
大綱では、今後について

  • 公平性

  • 実際の利用状況

を踏まえて見直すとされています。

👉
「いつか考えよう」ではなく、
使える制度は、使えるうちに検討・実行することが重要です。

⑤ ポイント整理|今回の資産税改正を一目で理解

改正内容の要点まとめ

  • 貸付用不動産の評価見直し → 相続対策の再設計が必要

  • 教育資金一括贈与 → 令和8年3月末で終了

  • 事業承継税制 → 猶予はあるが期限付き

  • 節税より「実態・合理性」が重視される流れ

中小企業経営者が今やるべきこと

  • 現在の相続・贈与対策の棚卸し

  • 不動産を含めた資産全体の整理

  • 事業承継の「時期」と「方法」の明確化

よくある質問Q&A

Q1:不動産を持っているだけで相続税は増えますか?

A:必ず増えるわけではありません。
ただし、「評価差だけを狙った対策」は通用しにくくなる可能性があります。
今後は総合的な設計が重要です。

Q2:事業承継税制は今すぐ使うべきですか?

A:会社の状況によりますが、
「選択肢として検討する価値がある制度」であることは間違いありません。
早めのシミュレーションをおすすめします。

まとめ|資産税改正は「早めの相談」が最大の対策です

令和8年度税制改正大綱【資産税編】は、
「資産を持つ経営者ほど影響を受けやすい改正」です。

特に、

  • 不動産

  • 相続・贈与

  • 事業承継

は、後回しにすると選択肢が狭まります。

税理士法人ビジョン・ナビでは、
中小企業経営者・個人事業主向けに、資産税・事業承継の無料相談を行っています。

「今の対策がこの先も通用するのか?」
そう感じた今が、見直しのベストタイミングです。

👉 ぜひお気軽にご相談ください。

税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。