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令和8年度税制改正大綱(消費税編)

税理士 林遼平

税理士 林遼平

 

「インボイス、結局どうなるの?」と感じていませんか?

「インボイス制度が始まったけれど、結局この先どうなるのかよく分からない」
「免税事業者との取引は、今後も続けて大丈夫なのだろうか」

中小企業経営者や個人事業主の方から、こうした声を多くいただきます。
特に消費税は、制度変更の影響がそのまま資金繰りや利益に直結する税金です。

令和8年度税制改正大綱では、消費税について
「インボイス制度の定着」と
「事業者間の不公平の是正」を目的とした、重要な方向性が明確に示されました。

この記事では、
令和8年度税制改正大綱(消費税編)について、
中小企業・個人事業主の方が「自分に関係あるポイント」だけを、
できるだけ分かりやすく解説します。

「知らなかった」で損をしないためにも、ぜひ最後までご覧ください。

① 令和8年度税制改正大綱における消費税の基本的な考え方

消費税改正のキーワードは「公平性」と「定着」

今回の税制改正大綱で一貫して示されているのは、
「消費者が負担した消費税は、すべて国・地方に納税されるべき」という考え方です。

これまでの消費税制度では、

  • 免税事業者との取引

  • インボイス制度の経過措置

  • 国境を越えた電子商取引

などにより、実質的に消費税が納税されないケースが存在していました。

令和8年度改正では、これらを放置せず、
制度を「例外だらけ」から「原則通り」に戻す方向性が明確になっています。

中小企業・個人事業主も無関係ではない理由

「うちは国内取引だけだから関係ない」
「小規模事業者だから影響は少ない」

そう思われがちですが、実際には
✔ 仕入先が免税事業者
✔ 外注先が個人事業主
✔ ECサイト・海外サービスを利用

といった形で、多くの事業者が影響を受けます。

特に今後は、取引先の選び方そのものが経営判断になる時代に入っていきます。

② インボイス制度はどう変わる?経過措置の整理

「2割特例」終了後の新たな経過措置

インボイス制度開始時に設けられた、いわゆる「2割特例」は、
将来的に終了することが前提とされていました。

今回の税制改正大綱では、その後の対応として
インボイス発行事業者となった個人事業主向けに、売上税額の3割納付とする経過措置
2年間限定で設けられることが示されています。

これは、

  • 急な税負担増

  • 事務負担の増加

を緩和するための措置ですが、あくまで一時的な救済です。

免税事業者からの仕入税額控除は段階的に縮小

インボイス制度の核心とも言えるのが、
免税事業者からの仕入税額控除の扱いです。

今回の改正では、以下のように段階的な縮小が明示されました。

期間 現行 控除割合
~令和8年9月 80%控除 80%控除(現行経過措置)
令和8年10月~   70%控除
令和10年10月~ 50%控除 50%控除
令和11年10月~ 控除不可(0%)  
令和12年10月~   30%控除
令和13年9月末以降   完全終了(0%)

 つまり、免税事業者との取引は、年々コストが増えることになります。

③ 国境を越えた取引・EC取引への消費税課税強化

少額輸入(免税輸入)の見直し

これまで、少額輸入貨物については消費税が免税されていました。
しかしこの制度により、国内事業者が不利になるケースが増えていました。

令和8年度改正では、

  • 少額輸入であっても

  • 販売者に消費税の納税義務を課す

  • プラットフォーム事業者に納税義務を転換

といった制度が導入される方向性が示されています。

越境EC・海外サービス利用の注意点

広告配信、クラウドサービス、海外ECなど、
知らないうちに「国境を越えた取引」を行っている事業者は少なくありません。

今後は、
✔ 課税関係の確認
✔ 取引先の区分(国内・国外)
✔ 消費税の処理方法

を、より正確に管理する必要があります。

参考:国税庁「インボイス制度特設サイト」

④ 今回の改正で押さえるべきポイント整理

ポイントを一覧で整理すると…

✔ 消費税改正の要点

  • インボイス制度は「完全定着」が前提

  • 免税事業者との取引は年々不利に

  • 経過措置はすべて「終了前提」

  • 越境取引・EC取引への課税が強化

経営者が今から考えるべきこと

  • 取引先を今後どうするか

  • 価格転嫁はできているか

  • 消費税を「預り金」として管理できているか

これらはすべて、利益と資金繰りに直結する経営判断です。

⑤ よくある質問Q&A

Q1:免税事業者との取引は今後やめた方がいいですか?

必ずしも即時にやめる必要はありません。ただし、
今後はコスト増になる前提での判断が必要です。
価格交渉や契約条件の見直しも含め、早めの検討をおすすめします。

Q2:インボイス発行事業者になるべきか迷っています

売上規模、取引先、将来の事業計画によって答えは異なります。
一度登録すると簡単には戻せないため、
税理士とシミュレーションした上での判断が重要です。

まとめ|消費税は「知らない」が最大のリスクです

令和8年度税制改正大綱(消費税編)は、
単なる制度変更ではなく、経営の前提条件が変わる改正です。

特に中小企業・個人事業主の方ほど、
「あとで考えよう」と後回しにすると、
気づいたときには負担が増えているケースが少なくありません。

税理士法人ビジョン・ナビでは、
✔ インボイス制度の影響整理
✔ 免税・課税の判断サポート
✔ 消費税の実務・資金繰り相談

を、初回無料相談で承っています。

「自社の場合はどうなるのか?」
そう感じた方は、ぜひお気軽にご相談ください。

税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。