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事業承継とは?基本からわかりやすく解説

税理士 林遼平

税理士 林遼平

事業承継は「まだ先の話」ではありません

「そろそろ引退も考えたいが、会社をどうするべきか分からない」
「子どもに継がせるべきか、第三者に譲るべきか迷っている」
こうした悩みを持つ中小企業経営者の方は少なくありません。

事業承継とは、単に会社を“誰かに渡す”ことではなく、
経営・資産・想いを次世代へ引き継ぐプロセスです。

この記事では、
・事業承継の基本的な考え方
・代表的な承継方法の違い
・税務・資金面の注意点

を整理し、自社にとってどの方向性が現実的かを考えるための材料を提供します。

事業承継とは?まず押さえるべき基本

事業承継は「経営」「資産」「知的財産」の引き継ぎ

事業承継というと「株式を渡すこと」と思われがちですが、それだけではありません。

一般的には、次の3つを引き継ぐことを指します。

  • 経営権(代表者の地位)
  • 株式などの資産
  • 取引先・ノウハウ・従業員との関係

特に中小企業では、経営者個人に信用や人脈が集中していることが多く、単純に代表を交代するだけではうまくいかないケースもあります。

そのため、事業承継は数か月ではなく、数年単位で準備する経営課題と考えるのが現実的です。

なぜ早めの準備が重要なのか

中小企業庁の調査でも、後継者不在が廃業理由の上位に挙がっています。
参考:中小企業庁「事業承継ガイドライン」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/

「まだ元気だから大丈夫」と思っていても、
急な病気や事故が起きれば、会社は一気に不安定になります。

事業承継は、経営者が元気なうちに進めることで、選択肢が広がります。
時間があることで、親族承継・従業員承継・M&Aなどを冷静に比較できます。

事業承継の3つの方法と特徴

① 親族内承継

最もイメージしやすいのが、子どもや親族に会社を引き継ぐ方法です。

メリット

  • 社内外の理解を得やすい
  • 企業文化を維持しやすい

注意点

  • 後継者の意思・能力
  • 株式の評価額と贈与税・相続税

株式を無償で渡せば税金が発生する可能性があります。
特例事業承継税制などの制度もありますが、適用要件や期限管理が重要です。
(参考:国税庁「事業承継税制」)

② 従業員承継(社内承継)

役員や幹部社員に引き継ぐ方法です。

メリット

  • 事業内容をよく理解している
  • 社内の混乱が少ない

注意点

  • 株式取得の資金負担
  • 金融機関の理解

後継者に株式を買い取る資金が必要になるため、融資や分割取得の設計がポイントになります。

③ 第三者承継(M&A)

社外の企業や個人に会社を譲渡する方法です。

メリット

  • 後継者不在でも承継可能
  • 創業者利益を得られる可能性

注意点

  • 従業員や取引先への影響
  • 企業価値の算定

最近は中小企業でもM&Aが一般的になっていますが、価格だけでなく「誰に引き継ぐか」が重要な判断材料になります。

税務・資金面で見落としやすいポイント

株式評価と税負担の把握

非上場株式は、思っている以上に評価額が高くなることがあります。
利益が出ている会社ほど、株価も上がりやすい傾向があります。

そのため、
「まだ引き継ぐ予定はない」段階でも、
自社株評価を一度把握しておくことが重要です。

評価額を知らないまま相続が発生すると、想定外の税負担になる可能性があります。

個人保証・借入金の整理

中小企業では、経営者個人が借入の連帯保証人になっていることが多いです。

承継時には、

  • 保証の引き継ぎ
  • 借入の借換え
    などの調整が必要になるケースもあります。

金融機関との関係も含め、事前の調整が欠かせません。

ポイント整理:自社の状況を確認するために

事業承継の検討ポイント

  • 後継者候補はいるか
  • 自社株の評価額はいくらか
  • 借入や個人保証の状況
  • 従業員・取引先への影響
  • 承継までの希望時期

【自社対応で問題ないケース】

  • まだ承継時期が10年以上先
  • 後継者候補が明確で、株式も少額
  • 借入や保証関係が整理されている

この場合は、まず情報収集と現状把握から始める段階といえます。

【専門家に確認した方が安心なケース】

  • 株価が高額になりそう
  • 相続税・贈与税が不安
  • 後継者が未定
  • M&Aも視野に入れている

税務・法務・資金面が絡むため、一度整理するだけでも不安は大きく減ります。

よくある質問(Q&A)

Q1:事業承継は何歳から考えるべきですか?

明確な年齢基準はありませんが、60歳前後から検討を始める方が多いです。
ただし、体力や健康状態に関係なく、早めに方向性を整理しておくことで選択肢が広がります。

Q2:後継者がいない場合は廃業しかありませんか?

必ずしもそうではありません。
第三者承継(M&A)という方法もあります。
最近では中小企業専門のマッチング支援も増えています。

Q3:相談すると必ず承継を進めなければなりませんか?

いいえ。
現状整理だけを目的とした相談も可能です。
自社の状況を把握すること自体が大きな一歩になります。

まとめ:事業承継は「選択肢を知ること」から始まる

事業承継とは、会社の未来をどう設計するかという経営判断です。
親族内承継、従業員承継、M&Aと、それぞれに特徴があります。

重要なのは、
「どれが正解か」ではなく、
自社にとって現実的な選択肢は何かを整理することです。

まだ具体的な時期が決まっていなくても、
一度現状を確認することで、不安は大きく軽減されます。

迷いがある段階でこそ、情報を整理し、必要に応じて専門家の意見を聞くことで、より納得感のある判断ができるでしょう。

税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。