経理担当が1人しかいない会社のリスクと対策―中小企業が押さえておくべき“見えない危険”とは?―サムネイル画像

経理担当が1人しかいない会社のリスクと対策

税理士 林遼平

税理士 林遼平

こんにちは、税理士法人ビジョン・ナビです!

「経理担当は一人いれば十分だろう」
「うちは小規模だから今の体制で問題ないはず…」

中小企業では、経理を1人で担う「ワンオペ経理」が珍しくありません。ところが、経理担当が急な退職・休職をした瞬間、会社の資金繰りや取引先対応がストップしてしまうことも。経理は日常的にミスが許されず、属人化しやすいため、1人依存の状態は実は大きなリスクを抱えています。

この記事では、経理担当が1人しかいない会社が抱えるリスクと、今すぐできる実践的な対策をわかりやすく解説します。「なんとなく不安…」という状況から抜け出し、安心して事業に集中できる体制づくりに役立ててください。

経理担当が1人しかいない会社の主なリスク

① 業務が止まる(急な退職・休職のリスク)

経理担当が突然休むと、次のような問題が一気に発生します。

  • 経理処理が止まり資金繰りの把握ができない

  • 給与計算や支払いが遅れ信用問題につながる

  • 申告期限に間に合わなくなり延滞リスクが生じる

特に急な退職や病気は予測できません。「後任が決まるまで半年かかった」というケースも多く、その間の経理が完全に止まる企業もあります。

② 業務の属人化で“ブラックボックス化”する

ワンオペ経理では、帳簿の付け方、Excel管理、請求書処理など、担当者の頭の中にしかない「独自ルール」が増えていきます。
すると、

  • 引き継ぎが困難

  • ミスに気づけない

  • 経営者が状況を把握できない

という状態が発生。経営の重要指標である「資金繰り」「利益構造」が見えなくなり、経営判断の精度が落ちてしまいます。

③ ミスの発見が遅れ、大きなトラブルに発展

経理は二重チェックが前提の業務ですが、経理担当が1人の場合、チェック体制がゼロです。
そうすると、

  • 入力ミスに気づけない

  • 請求漏れ・支払い漏れ

  • 経費精算の不正

  • 粉飾の温床になる

というリスクが高まります。

特に不正リスクは深刻で、「社長が気づいた時には数百万円の着服だった」というニュースも珍しくありません。

国税庁の調査でも、内部チェック体制の弱い会社は誤りや不正が起こりやすいと指摘されています。
国税庁:内部牽制の重要性

④ 業務負荷が高く離職につながる

経理担当が1人しかいない場合、

  • 月末月初が常に残業

  • 決算期だけ負荷が跳ね上がる

  • マルチタスクにより慢性的な疲労

など、高いストレスにさらされがちです。
結果的に離職の引き金となり、それがさらに経営リスクとなります。

経理1人体制の企業が取るべき対策

① 業務の棚卸しとマニュアル化

最初にすべきは、経理業務の棚卸しです。

  • どんな業務をどれくらいの頻度で行っているか

  • どのシステムを使っているか

  • 手順や注意点は何か

これを洗い出し、最低限の業務マニュアル化を進めることで、突然の欠員時でも第三者が対応しやすくなります。

② チェック体制をつくり“二重チェック”を実現

担当者1人でもできるチェック体制として、

  • 経営者が月次の試算表を確認

  • 銀行残高と帳簿の照合作業を定期化

  • 支払承認ルールを明確化

など、最小限の二重チェックを仕組み化することが重要です。

③ クラウド会計で自動化を進める

クラウド会計を使えば、

  • 入力作業が大幅に削減

  • データ共有が容易

  • 業務の属人化を防止

といったメリットがあります。将来的な外注・引き継ぎもスムーズになり、経理1人体制によるリスクを軽減できます。

④ 経理の一部または全部をアウトソースする

最も確実な対策は、専門家に外注して“第二の経理担当”をつくることです。

外注することで、

  • 担当者の退職リスクがゼロになる

  • 二重チェックが自然に機能する

  • 専門家による正確な処理でミスが防げる

  • 経営者が数字を把握しやすくなる

といったメリットが得られます。

「経理担当をもう1人雇うよりコストを抑えられる」ことも、アウトソーシングが選ばれている理由です。

経理担当1人体制のリスクと対策まとめ

  • 急な退職・休職で業務がストップ

  • 属人化で経営数字が見えにくくなる

  • ミスや不正の温床になりやすい

  • 負荷過多で離職リスクが高まる

→ 対策としては

  • 業務棚卸し・マニュアル化

  • チェック体制の構築

  • クラウド会計による自動化

  • 経理アウトソーシングの活用

よくある質問(Q&A)

Q1. 経理担当が1人でも問題ない会社の特徴はありますか?

A. 取引量が少なく、毎月の請求・支払が10件前後で、経理もほぼ自動化されている会社であれば、当面は1人体制でも運用可能です。ただし、急な退職リスクはゼロではありません。最低限、外部の専門家とつながりを持っておくことが大切です。

Q2. 経理アウトソーシングはどれくらいの費用で利用できますか?

A. 業務範囲によりますが、月額2~5万円程度から利用可能なサービスが多いです。新たに社員を雇うより人件費を抑えられるため、コストを下げつつリスクを回避したい企業に向いています。

■まとめ

経理担当が1人しかいない状態は、表面上は問題なくても、会社の存続そのものに関わるリスクを抱えています。対策を先送りにすると、いざトラブルが起きた時に大きな損失につながりかねません。

「経理の属人化が気になる」
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そんな不安が少しでもあるなら、今すぐ相談することをおすすめします。

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税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。