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「開業1年目で赤字を出したくない」新設法人のための税務戦略

税理士 林遼平

税理士 林遼平

1年目黒字は“運”ではなく“設計”でつくる

「開業1年目から黒字にしたい」「赤字を出すのは避けたい」
こうした声は、新しく法人を設立した経営者の方から非常によく聞きます。

しかし現実には、最初の1年は売上が不安定で、固定費ばかりが先に発生し、
「気づけば赤字…」というケースは少なくありません。

そして一度赤字になると、資金繰りが悪化し、追加融資も難しくなるなど、経営上のリスクが増えていきます。

ですがご安心ください。
開業1年目の黒字化は、売上予測・経費設計・税務戦略を最初の段階でしっかり固めておけば、実現可能です。

この記事では、

  • 新設法人が赤字になりやすい本当の理由

  • 1年目黒字を実現する税務戦略

  • 固定費と資金繰りの考え方

  • 税理士がサポートできる対策

を、やさしく・具体的に解説していきます。

開業1年目の法人が赤字になりやすい理由

① 売上が軌道に乗る前に固定費が先行する

オフィス賃料、通信費、広告費、人件費など、固定費は開業初期から発生します。
一方で売上は「商談→受注→入金」とタイムラグがあるため、キャッシュが先に減っていきます。

② 経費の使い方に“戦略”がない

開業時は設備投資・備品購入が多くなりがちですが、
「本当に必要なものか」「後回しにできるか」の判断が甘いケースもよく見られます。

③ 税務の知識不足で“節税のタイミング”を逃す

開業1年目は特に、

  • 開業費

  • 資産計上か経費処理かの判断

  • 消費税の適格請求書(インボイス)対応
    などで節税余地が大きいにもかかわらず、知識不足で逃してしまうことがあります。

④ 月次の数字管理ができていない

黒字化した会社の共通点は「毎月の数字を必ず把握している」こと。
逆に赤字会社は決算直前まで利益を把握していないケースが大半です。

1年目から黒字化するための税務戦略

① 開業費の有効活用で“利益調整”を行う

税務上の「開業費」は、開業前の費用を資産計上し、任意のタイミングで費用化できます。
これにより、

  • 1年目の利益を必要以上に圧迫しない

  • 資金繰りを維持しながら節税できる
    といったメリットがあります。
    (参考:国税庁|開業費

② 設備投資は“資産計上か経費か”を必ず判断

パソコン・車両・機械などは10万円以上なら原則資産計上になり、減価償却が必要です。
一方、少額減価償却資産の特例(中小企業は30万円未満を即時費用化できる)を活用することで、
キャッシュと利益のバランスを調整できます。

③ 消費税の免税期間を最大限に活かす

新設法人は、条件を満たせば最初の2期は消費税が免税になります。
ただし、

  • 資本金1,000万円以上

  • 一定の取引金額を超える場合
    などは課税事業者になるため、開業時点での設計が重要です。

④ 法人税の“中間申告”を見越した資金計画を立てる

1年目の利益が出ていると、2年目に「中間申告」による税金の前払いが発生します。
これを見越さずに資金を使い切ると資金繰りが悪化します。

固定費と資金繰りをコントロールして赤字回避

① 固定費の上限を“売上の●%以内”に管理する

一般的に、開業1年目は 固定費を売上の30〜40%以内 に抑える設計が目安。
賃料・人件費・広告は特に膨らみやすいので、最初に上限ラインを決めておきましょう。

② 資金繰り表を作り、6ヶ月先の現金残高を可視化

資金繰り表があれば、

  • いつ赤字になるか

  • いつ入金・支払が集中するか
    が分かり、追加融資や設備投資の判断も適切になります。

③ “利益が出ているのにお金がない”状態を避ける

法人は減価償却・仮払金・未払金などの影響で、利益とキャッシュが一致しないことが多いです。
利益と現金の「ズレ」を理解しておくことで、黒字倒産リスクを減らせます。

ポイント整理

1年目に赤字を出す原因 対策(税務戦略)
固定費が先に膨らむ 固定費の上限設定・初期投資の精査
経費の使いすぎ 必要性の判断・資産計上との比較
税務知識不足 開業費・少額減価償却・免税制度の活用
数字管理不足 月次監査・資金繰り表の作成

 よくある質問Q&A

Q1:開業1年目は赤字でも問題ないと言われますが、本当ですか?

A:税務上は問題ありませんが、資金ショートのリスクが高く、追加融資も受けにくくなります。戦略的に黒字化を目指す方が経営は安定します。

Q2:開業費はどこまで計上できますか?

A:開業準備のために使った費用(広告、備品、交通費など)は広く認められます。ただし領収書の保管が必須です。

Q3:赤字にしないポイントはありますか。

A:業務に必ず必要な設備や備品であっても「必要だから買う」ではなく、まずは業務が回る最低限の投資にとどめることが重要です。高品質な設備でなくても、中古品や最低限の機能で十分なケースも多く、人力でカバーできる部分はそちらを選んだ方が結果的に利益を残せます。開業初期は身軽さが武器になるため、固定費を増やさない判断こそが成功の秘訣です。

1年目黒字は“最初の設計”で決まる。無料相談をご活用ください

開業1年目で赤字を避けるには、

  • 税務戦略

  • 固定費のコントロール

  • 資金繰りの見える化

  • 経費処理の最適化

が欠かせません。

特に新設法人は判断に迷う場面が多く、誤った経費処理や設備投資が赤字につながることもあります。

「黒字でスタートしたい」
「最初の数字設計をプロに任せたい」

そのような方は、ぜひ一度、税理士法人ビジョン・ナビの無料相談をご利用ください。
開業1年目を成功年にするための最適な税務戦略をご提案します。

税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。