経理担当者の退職後に、社長または管理部長が引継ぎチェックリストを確認しているビジネス向けフラットイラスト。

経理担当者が辞めた後の引継ぎチェックリスト|資料・業務一覧・社内体制を月次決算から見直す方法

吉本亘

吉本亘

経理担当者が辞めた後、会社が最初に困るのは「何をどこまで引き継げているのか分からない」という状態です。

経理業務は、会計入力だけではありません。
請求書の確認、支払い予定の管理、給与計算、住民税や社会保険料の確認、税理士への資料共有、月次試算表の作成など、毎月の業務が細かくつながっています。

そのため、経理担当者が退職すると、

「請求書はどこに保存されているのか」
「支払い予定は誰が確認しているのか」
「給与計算に必要な資料は何か」
「税理士には毎月何を送っているのか」
「月次決算はどこまで進んでいるのか」

といったことが一気に分からなくなることがあります。

経理担当者が急に退職する場合の初動対応については、別記事で整理しています。

関連記事:
経理担当者が急に退職する会社へ|月次決算・支払・給与を止めない初動対応

この記事では、その次の段階として、経理担当者が辞めた後に確認したい引継ぎ資料、業務一覧、社内体制の見直しポイントをチェックリスト形式で整理します。

経理の引継ぎで大切なのは「作業」よりも「流れ」を残すこと

経理の引継ぎというと、まず会計ソフトの操作方法や請求書の処理方法を思い浮かべるかもしれません。

もちろん、具体的な作業手順も大切です。

ただ、それ以上に大切なのは、毎月の経理業務がどのような流れで進んでいるかを残すことです。

たとえば、月次決算を考えるだけでも、次のような流れがあります。

流れ 内容
資料回収 請求書、領収書、通帳データ、カード明細などを集める
会計入力 会計ソフトに取引を入力する
確認 売掛金、買掛金、未払金、預金残高などを確認する
給与反映 給与、社会保険料、源泉所得税などを会計に反映する
税理士共有 必要な資料や確認事項を税理士へ共有する
月次確認 試算表、利益、資金繰り、納税予定を確認する

この流れのどこかが抜けると、月次決算が遅れたり、支払い漏れが起きたり、給与計算に影響したりします。

経理担当者が辞めた後の引継ぎでは、単に「この作業を誰がするか」だけでなく、どの資料を使って、どの順番で、誰が確認しているのかを整理することが重要です。

まず確認したい経理資料チェックリスト

経理担当者が辞めた後は、まず資料がどこにあるかを確認します。

資料が見つからなければ、会計入力も、支払い確認も、税理士への共有も進みません。

最低限、次の資料を確認しておきましょう。

区分 確認したい資料 確認ポイント
会計 試算表、総勘定元帳、仕訳帳 直近何月まで処理できているか
売上 請求書、売上台帳、入金予定表 未請求・未入金がないか
仕入・外注 仕入請求書、外注請求書、買掛金一覧 未払い・二重払いがないか
経費 領収書、カード明細、経費精算資料 未処理分が残っていないか
預金 通帳、入出金明細、ネットバンキングデータ 会計残高と合っているか
給与 給与台帳、勤怠データ、給与ソフト情報 給与計算に必要な情報がそろっているか
税務 過去の申告書、納付書、税理士への共有資料 次の納付予定を把握できるか
契約 家賃、リース、借入、保険、顧問契約 毎月・毎年の支払い条件を確認できるか

このとき、資料が紙で保管されているのか、クラウド上にあるのか、担当者の個人フォルダにあるのかも確認が必要です。

特に、担当者個人のパソコンやメールにしか残っていない資料がある場合は注意が必要です。
退職後に確認できなくなる前に、会社として共有できる場所に整理しておきましょう。

会計ソフト・給与ソフト・ネットバンキングの権限を確認する

経理担当者が辞めた後に、意外と困りやすいのがシステムの権限です。

会計ソフトや給与ソフトにログインできない。
ネットバンキングの承認者が分からない。
クラウドストレージの管理者が退職者のままになっている。

このような状態になると、業務が止まる原因になります。

確認したいのは、次のような項目です。

システム 確認すること
会計ソフト 管理者権限、利用者権限、会計データの閲覧・出力方法
給与ソフト 管理者権限、給与データ、過去の給与台帳
勤怠システム 勤怠データの出力方法、締め処理の担当者
ネットバンキング 管理者、作成権限、承認権限、振込データ作成者
クラウドストレージ 請求書・領収書・契約書の保存場所
メール・チャット 税理士や取引先とのやり取りの確認方法

ここで大切なのは、退職者のIDやパスワードをそのまま使い回すことではありません。

会社として、誰が管理者で、誰が利用者で、誰が承認するのかを整理することです。

特にネットバンキングは、振込データを作る人と承認する人を分けるなど、社内の確認体制を整えておく必要があります。

経理担当者が辞めるタイミングは、システム権限を見直すよい機会でもあります。

引き継ぐべき経理業務一覧

次に、経理担当者が担当していた業務を一覧化します。

経理業務は、毎日行う業務、毎月行う業務、年に数回だけ発生する業務に分かれます。

毎月の業務だけを引き継いだつもりでも、年末調整、労働保険、決算、賞与、住民税更新などを忘れていると、後から慌てることになります。

毎日・随時発生する業務

まずは、日々の業務です。

業務 確認ポイント
請求書の受領 紙・メール・システムのどこに届くか
領収書の整理 誰が提出し、どこに保存するか
入金確認 どの口座を見て、誰が確認するか
支払い依頼の受付 誰が申請し、誰が承認するか
経費精算 締切日、承認者、精算方法
税理士への質問対応 誰が窓口になっているか

日々の業務は、細かい作業が多いため、口頭だけでは引き継ぎ漏れが起こりやすいです。

できれば、業務名、使用資料、処理タイミング、担当者、確認者を一覧にしておきましょう。

毎月発生する業務

次に、毎月の業務です。

業務 確認ポイント
会計入力 いつまでに入力するか
通帳・カード明細の確認 どの口座・カードを対象にするか
売掛金管理 未入金の確認方法
買掛金・未払金管理 支払い予定の確認方法
給与計算 勤怠締め、給与支給日、控除項目
住民税納付 各市区町村への納付方法
源泉所得税の確認 毎月納付か納期の特例か
社会保険料の確認 口座振替・納付予定の確認
月次試算表の作成 何日までに確認するか
税理士への資料共有 何を、いつ、どう送るか

毎月の業務で重要なのは、締切です。

「だいたい月末までにやる」ではなく、
「毎月5営業日までに資料回収」
「10日までに会計入力」
「15日までに月次確認」
というように、できるだけ日付を決めておくと引継ぎやすくなります。

年に数回発生する業務

年に数回しか発生しない業務も忘れやすいポイントです。

業務 主な時期・確認ポイント
年末調整 必要資料、従業員への案内、税理士・社労士との役割分担
法定調書 支払先、報酬、提出資料の確認
償却資産申告 固定資産台帳、対象資産の確認
決算 決算資料、棚卸、未払・前払、税理士との確認
労働保険年度更新 賃金集計、社労士との役割分担
算定基礎届 給与データ、社労士との役割分担
住民税更新 6月給与からの控除額変更
賞与支給 賞与計算、社会保険料、源泉所得税、支給日

年に数回しかない業務は、担当者の記憶に頼っていることが多いです。

退職後に「去年どうしていたか分からない」とならないように、前年の資料や提出履歴を確認しておきましょう。

月次決算から見直すと、引継ぎ漏れに気づきやすい

経理の引継ぎをするときは、業務をバラバラに見るよりも、月次決算から逆算すると整理しやすくなります。

なぜなら、月次決算には経理業務の結果が集まるからです。

月次試算表を作るには、売上、仕入、経費、給与、税金、預金、売掛金、買掛金などがそろっている必要があります。

つまり、月次決算が遅れている場合は、どこかの業務に詰まりがあります。

たとえば、

月次決算が遅れる原因 見直すべき業務
請求書が集まらない 資料回収ルール
入金確認が遅い 売掛金管理
支払い予定が分からない 買掛金・未払金管理
給与データが届かない 勤怠・給与計算フロー
税理士への共有が遅い 資料共有方法
確認者が決まっていない 社内承認フロー

引継ぎを機に、月次決算が何日遅れているのか、どの資料で止まっているのかを確認してみましょう。

単に退職者の業務を引き継ぐだけでなく、月次決算を早めるための改善点も見えてきます。

社内体制で見直したいポイント

経理担当者が辞めた後は、次の担当者を決めるだけでは不十分です。

同じように1人の担当者へ業務を集中させると、また退職や休職のタイミングで経理が止まる可能性があります。

そのため、社内体制も見直しておきましょう。

担当者と確認者を分ける

経理業務では、作業する人と確認する人を分けることが大切です。

特に、支払い、給与、入金確認、月次試算表の確認は、1人だけで完結させるとミスに気づきにくくなります。

たとえば、

業務 作業担当 確認者
会計入力 経理担当者 税理士・上長
支払予定表 経理担当者 社長・管理部長
給与計算資料 経理担当者 社労士・上長
月次試算表 税理士・経理担当者 社長・役員
入金確認 経理担当者 営業責任者・上長

このように、作業と確認を分けるだけでも、属人化やミスのリスクを下げやすくなります。

税理士・社労士との役割分担を明確にする

経理担当者が辞めた後は、税理士や社労士との役割分担も確認しておきたいポイントです。

会社によっては、

「税理士に何を送っているのか分からない」
「社労士に給与データをいつ渡しているのか分からない」
「年末調整や住民税の対応を誰が見ているのか分からない」

という状態になっていることがあります。

税理士や社労士に依頼している業務がある場合でも、社内側で資料を集めたり、確認したりする役割は残ります。

そのため、次のように整理しておくと分かりやすくなります。

項目 社内で行うこと 外部に相談・依頼すること
月次決算 資料回収、確認事項の共有 会計処理、試算表確認、税務確認
給与 勤怠・入退社情報の整理 給与計算、社会保険手続きの確認
年末調整 従業員への資料回収 年末調整計算、法定調書作成
決算 棚卸、未払、資料整理 決算処理、申告書作成
労務 勤怠・賃金情報の整理 社会保険・労働保険手続き

ここが曖昧なままだと、退職後に「これは誰がやるのか」が分からなくなります。

マニュアルは完璧でなくてもよい

経理の引継ぎでは、完璧なマニュアルを作ろうとして手が止まることがあります。

しかし、退職対応で大切なのは、最初から完璧なマニュアルを作ることではありません。

まずは、次のような簡単な形で十分です。

項目 書いておく内容
業務名 例:支払予定表の作成
実施日 例:毎月20日まで
使用資料 例:請求書、通帳明細、買掛金一覧
保存場所 例:共有フォルダ、クラウドストレージ
作業担当 例:経理担当者
確認者 例:社長、管理部長
注意点 例:口座振替分は二重払いしない

この程度でも、何も残っていない状態よりは大きく改善できます。

経理業務は細かいため、すべてを一度に整理しようとすると負担が大きくなります。
まずは、給与、支払い、月次決算など、止まると困る業務から優先して整理しましょう。

経理担当者が辞めた後に見直したい3つの判断

経理担当者が辞めた後は、単に次の担当者へ引き継ぐだけでなく、今後の経理体制をどうするかを考えるタイミングでもあります。

特に、次の3つは早めに整理しておきたいところです。

1. 社内で採用するのか、外部と分担するのか

経理担当者が辞めた後、すぐに新しい経理担当者を採用できるとは限りません。

また、採用できたとしても、前任者と同じ業務をすべて任せられるまでには時間がかかります。

そのため、社内で採用する業務と、外部に任せる業務を分けて考えることが大切です。

たとえば、社内では支払いの最終承認や取引先との判断を行い、外部には会計入力、資料整理、月次資料の作成補助を依頼する方法もあります。

2. 経理業務をどこまで見える化するか

経理業務が担当者の頭の中だけにあると、退職のたびに同じ問題が起こります。

そのため、業務一覧、資料の保存場所、締切、確認者を見える化することが重要です。

見える化できていれば、新しい担当者が入ったときも、税理士や外部スタッフに相談するときも、状況を共有しやすくなります。

3. 月次決算をいつまでに確認できる体制にするか

経理体制を見直すなら、月次決算のスピードもあわせて考えたいところです。

月次試算表が翌月末や翌々月にならないと見られない状態では、経営判断に使いにくくなります。

退職をきっかけに、資料回収の締切、会計入力の締切、税理士への共有タイミング、月次確認日を決めておくと、経理体制を改善しやすくなります。

経理代行やBPOを検討する前に整理したいこと

経理担当者が辞めた後、社内だけで対応するのが難しい場合は、経理代行やBPOを検討する会社もあります。

ただし、いきなり「経理を全部任せたい」と考えるよりも、まずはどこに困っているのかを整理することが大切です。

確認したいのは、次のような点です。

確認項目 整理する内容
困っている業務 会計入力、支払い、給与、月次決算、資料整理など
止まりそうな業務 給与、支払い、税金納付、月次試算表など
社内に残す業務 承認、資金移動、経営判断、取引先対応など
外部に任せたい業務 記帳、資料整理、月次資料、支払予定表の作成補助など
いつまでに整えたいか 今月中、決算前、担当者退職日までなど
どの資料があるか 試算表、通帳、請求書、給与台帳、過去の申告書など

この整理ができていると、税理士法人や外部専門家へ相談するときに、話が進みやすくなります。

経理担当者の退職で月次決算が止まりそうな場合や、どこまで経理代行で相談できるのかを知りたい場合は、こちらの記事も参考にしてください。

関連記事:
経理担当者の退職で月次決算が止まりそうな会社へ|税理士法人に相談できる経理代行の範囲

この記事では、経理担当者の退職後に、税理士法人へ相談できる経理代行の範囲や、月次決算・支払・給与まわりをどのように外部と分担できるかを整理しています。

経理引継ぎチェックリスト

最後に、経理担当者が辞めた後に確認したい項目を一覧にします。

まずは、すべてを完璧に整える必要はありません。
止めてはいけない業務から順番に確認しましょう。

チェック項目 確認済み
会計ソフトの管理者権限・利用者権限を確認した
直近の試算表が何月分まで作成済みか確認した
請求書・領収書・通帳データの保存場所を確認した
未処理の請求書や領収書がないか確認した
売掛金・未入金の確認方法を把握した
買掛金・未払金・支払い予定を一覧にした
ネットバンキングの権限と承認フローを確認した
給与ソフト・勤怠データ・給与台帳を確認した
住民税、社会保険料、源泉所得税の納付予定を確認した
税理士・社労士へ毎月共有している資料を確認した
年末調整、決算、労働保険など年次業務を確認した
業務ごとの担当者と確認者を決めた
社内に残す業務と外部に相談する業務を分けた
月次決算をいつまでに確認するか決めた
経理業務の簡単なマニュアルや一覧表を作成した

このチェックリストを使うことで、経理担当者が辞めた後に何を確認すべきか整理しやすくなります。

まとめ

経理担当者が辞めた後の引継ぎでは、会計ソフトの操作方法だけでなく、資料、業務一覧、社内体制まで整理することが大切です。

特に確認したいのは、次の3つです。

1つ目は、資料の所在です。
請求書、領収書、通帳データ、給与台帳、過去の申告書などがどこにあるか分からなければ、月次決算や支払い確認が進みません。

2つ目は、業務の一覧化です。
毎日・毎月・年に数回発生する業務を整理し、誰が作業し、誰が確認するのかを明確にしておく必要があります。

3つ目は、社内体制の見直しです。
経理担当者1人に業務が集中していた場合、次の担当者にそのまま引き継ぐだけでは、また同じ問題が起こる可能性があります。

経理担当者の退職は、会社にとって大きな負担です。
しかし同時に、月次決算、支払管理、給与計算、税理士・社労士との役割分担を見直すきっかけにもなります。

ビジョン・ナビでは、税務・会計の視点から、経理資料の整理、月次決算の確認、経理業務の見える化、外部サポートとの役割分担まで、会社ごとの状況に応じてサポートしています。

「経理担当者が辞めた後、何を引き継げばよいか分からない」
「月次決算や支払いが止まらないか不安」
「経理業務が担当者任せになっていて、社内で把握できていない」
「経理代行やBPOでどこまで任せられるのか、自社の状況に合わせて整理したい」

このようなお悩みがある場合は、まずは資料の所在、業務一覧、担当者と確認者を整理するところから始めてみてください。

自社だけで整理するのが難しい場合は、早めに専門家へ相談しておくと安心です。

 

吉本亘
執筆者:吉本亘
吉本亘(よしもととおる)税理士法人ビジョン・ナビ所属。入社以来、税理士補助として中小企業・個人事業主の月次処理や決算・申告関連のサポート業務に携わる。数字を「経営判断に使える形」に整えることを意識し、実務の現場で起こりやすい勘違いやつまずきポイントを、わかりやすく整理して伝えることを重視している。現在は業務と並行して、事務所ブログの企画・改善にも取り組んでいる。