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残業代・交通費・出張費…経費処理で間違いやすい労務連携ポイント

税理士 林遼平

税理士 林遼平

こんにちは、税理士法人ビジョン・ナビです!

「経費の処理は経理の仕事」と思われがちですが、実は労務との連携が非常に重要です。
特に「残業代」「交通費」「出張費」といった項目は、税務処理と労務管理の両面に関わるため、連携が不十分だとトラブルの原因になります。

この記事では、経理と労務の連携不足で起きやすい経費処理ミスと、その防止策をわかりやすく解説します。

■ 賞与の処理ミスが税務調査で指摘される理由

① 賞与支給日が届出とズレている

役員賞与は事前確定届出給与の届け出た支給日どおりに支給しなければ損金算入が認められません。
理由なく支給日を変更したり、担当者の判断で前後させたりすると、届出内容と一致しないとして全額否認されることがあります。
支給スケジュールを労務・経理で事前に共有し、日付変更を防ぐことが重要です。

② 支給金額・対象者が届出と異なる

支給金額を業績に合わせて増減したり、届出していない役員に支給したりすると、これも届出内容と不一致となり否認の対象です。
事前確定届出給与は非常に厳格な制度で、金額や対象者を変更することはできません。
経理と労務が届出書の内容を正しく共有し、支給前に必ず照合することが不可欠です。

■ 交通費の取り扱いミスに注意

① 「通勤手当」と「出張旅費」の違い

通勤手当は所得税法上、一定額まで非課税ですが、出張旅費は実費精算が原則です。
この区別が曖昧だと、課税・非課税の判定を誤るケースが多く見られます。

② 交通系ICカード明細の確認を怠らない

「ICカードで払ったから大丈夫」と思いがちですが、プライベート利用が含まれていることも。
経理と労務で利用区間・金額を確認し、業務実態と整合性を取ることが重要です。

■ 出張費で起きやすいトラブルと対策

① 日当の金額設定が不適切

出張手当(日当)は、業務の実態や役職に応じて「社会通念上妥当な範囲」に設定する必要があります。
高額すぎる場合は給与課税の対象になるため、社内規定を整備しておきましょう。

② 領収書のない支出の扱い

領収書がない「現金支給」「まとめ払い」などは、後から説明できない経費として否認されるリスクがあります。
支出目的と金額をメモや報告書に残すことが信頼性確保のポイントです。

■ 労務と経理が連携するためのチェックリスト

  • 勤怠データと給与計算の突合を毎月実施

  • 通勤手当・出張費の支給ルールを明文化

  • 領収書・IC明細を原則保存

  • 管理職・非管理職の区分を労務と共有

  • 福利厚生・旅費規程を定期的に見直し

■ よくある質問Q&A

Q1. 出張時の交通費を一律で支給しても問題ないですか?
A. 実費に近い範囲であれば問題ありませんが、過大な一律支給は給与とみなされる可能性があります。必ず社内規定を設けましょう。

Q2. テレワーク手当は福利厚生費として経費になりますか?
A. 実費補填が目的であれば非課税・経費算入が可能ですが、生活費補助とみなされる場合は課税対象です。

■ まとめ|経理と労務の連携が「正しい経費処理」の鍵

経費処理の誤りは、税務署からの指摘だけでなく、従業員との信頼関係の悪化にもつながります。
残業代・交通費・出張費といった日常的な支出ほど、労務との情報共有を徹底しましょう。

税理士法人ビジョン・ナビでは、税務と労務の両面からの経費処理チェックを行っています。
「自社の処理が正しいか不安…」という方は、ぜひ無料相談をご利用ください。

税理士 林遼平
執筆者:税理士 林遼平
林 遼平(はやし・りょうへい)税理士登録番号:124948号 税理士法人ビジョン・ナビ代表社員。京都出身。大学在学中に公認会計士試験に合格し、東京の監査法人にて上場企業の監査業務を担当。地元京都に戻り、平成29年より現法人の代表社員に就任。税務・会計に加え、IT導入支援や経営計画、労務対応にも精通。公認会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士の4資格を保有し、中小企業の経営支援に力を注いでいる。

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